精神の奥底
42 暴走する権力
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。その手のWAXAに匹敵する、もしくは更に上位の権力を持つ機関を通じてWAXAに抗議するんです」
「分かった…」
「本当に申し訳ない。ご子息には厳しい取り調べや自白を強要するようなことが行われるかもしれない。だが、絶対に真実を捻じ曲げさせはしない。全力を尽くします。ご子息を無理に逮捕した我々を信用しろという方が無理だということは重々承知です。ですが、今はこれしか言えません」
「…」
祐一朗はこの手の組織内での派閥争いや上から圧力というものの恐ろしさをよく知っていた。
本来なら1人の父親として猛抗議したくて仕方がない。
しかしこの場で下手に行動を起こそうとすれば、熱斗の首が締まりかねない。
どんなに正しい主張をしようと組織の上に真実を歪ませてでも自分の利益を優先する者がいる以上、容疑者の父親がおかしい人間だとして息子の方の立場を悪い方に誘導しかねない。
学校内でのいじめのようなものだ。
権力を持った者が間違いを犯し、それに誰かが正しいことを発言すれば、お前、頭大丈夫?などとあたかも正しい主張をするものの方がおかしいという状況にして孤立させる。
自分の保身、利益、正しいことを理解できない、自分の理解を越えた人間の存在を認めない、悪い意味で学の無い子供であり、腐りきった大人だった。
このまま引き下がれば、傍から見ている人間の目には父親の風上にも置けないような非情な父親に映るだろう。
だがどこまで無法な人間がいようとも法律を行使する機関の皮をかぶっている以上、熱斗の身を思えばこの場で下手な行動は起こせない。
祐一朗は悔しさのあまり、血の味がしてくる程に唇を強く噛み、音が聞こえる程に拳を強く握った。
「あなたの名前は?」
「私は暁シドウ。WAXAニホン支部特別遊撃班所属の人間です。連絡はここまで」
シドウは自分の連絡先をメモした紙を手渡す。
祐一朗はそれを受け取ると、周囲を殺意にも近い怒りと共に見渡すと抑えられない悔しさが滲み出た表情で帰って行った。
シドウは祐一朗や熱斗の心中を思うとValkyrieの件も重要だが、早くどうにかしなければならないと改めて確信する。
指揮官が多少傲慢でも構わない。
それでも正しい命令が行われていれば、迷惑を被るのは自分たちだけ、職務は正しく遂行される。
法に則って正義が行われるのだ。
だが今は違う。
木場という指揮官は傲慢であるだけではなく、法に則ろうとする精神も職務を忠実に行おうとする気があるようにも思えない。
その上、既に一般の人の親子が覚えのない罪を着せられ苦しんでいるのだ。
事態は一刻を争う。
だが組織の中で反乱を起こすというのは祐一朗が反抗する以上に難しい。
組織内ではカースト、すなわち階級があるせいだ。
木場は下の者がどんなに正しいことを言っても、上の者がそ
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