おまけ10話『背中』
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! ……黙って死にやがらねぇ! やっちまえ!」
黒ひげの言葉に反応したのは彼の凶暴な仲間たち。彼らの銃弾や斬撃が「……がふっ」と、今もまた体にガタが来てしまい咄嗟に動けずにいる白ひげへと襲い掛かる。
「おやじぃ!」
白ひげのピンチに、エースが何よりも慌てて動き出す。背中から、海軍中将による覇気のこもった斬撃を受けてなおその動きは止まらない。己の体を炎と化し、黒ひげたちの攻撃を炎の壁で防ごうと――
「――お前さんはワシが……仕留め゛る゛!」
突如現れたマグマの壁に阻まれた。
「っ! 赤犬! 目ぇ覚ましやがったのか!」
「……逃がすわけにはいかんのじゃあ!」
ハントの奥義を受けて一時的に戦線から離れていた赤犬も、その負傷した体を引きずって復帰していた。邪魔をされたエースから唸り声のような音が漏れるも、赤犬もそれに動じずにらみ合う。
エースと赤犬がにらみ合ったその一瞬。
その一瞬で、白ひげの運命は決まっていた。
「ゼハハ! やれぇ! ハチの巣にしろ!」
黒ひげ自身もまた白ひげへと銃撃を繰り返しながら、どこか下品で、どこか力強いその声はなぜか銃声の間隙を縫うかのように戦場に響く。そして、当然に轟くは、それこそ無数の銃撃音。それは海兵たちの銃声よりもなぜか重く、広くこの戦場へと降り注ぐ。
銃弾は、もはや覇気を扱うことすらもおぼつかない白ひげの老体へと吸い込まれていく。
「おやじ〜〜〜!」
白ひげを慕う、白ひげ海賊団の悲痛な声が戦場の色を塗り替えた。
まるで魚人島に向かっているのだろうかと思ってしまうほどに、暗い世界。
息をすることすら辛い。肺から息を吐き出そうとするだけで体内の熱いナニカがこぼれそうになる。
右腕がなぜか痙攣している。自分の体なのに言うことを聞きそうにない。
思考がまとまらない。酸素が足りないんじゃないかって思えるぐらい頭が働かない。
今、自分がどういう状況にいたのか、何があったのかすら思い出せない。わからない、
けど、きっと早く立たないといけない。
心のどこかでそう思っているはずなのに、なぜだろうか。
ふと、誰かの背中が頭に浮かんで、胸に染み渡った――
――格好いい人がいたんだ。
少し乱暴なところがあるけど義理人情に厚く、そして誰よりも強いその男は、きっと俺が人生で初めて惚れた男の背中だったんだろう。いや、過去形にしてしまうのは少し間違っている。なんせその背中にはいまだに憧れがあるんだから。
俺が死にかけていた時に現れた、少し乱暴な……まるでヒーロー。
曲がったことが大嫌いな、少し不器用な……まるでやくざの親分。
厳しくもあり、けれどそれ以上に優しくて、少し照れ屋な
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