おまけ9話『壁に潜んだ黒い影』
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空気を掴もうと腕を伸ばして「うっとおしいわ!」
「っ!?」
ガープが掌大のサイズの石ころをぶん投げてきた。
顔面コースだ。
どこにあったんだよ、そんなもん! ってちょっとだけ思ったけど、とりあえずギリギリで回避。顔面すれすれに飛んでいった石ころの行方を見届ける暇は、もちろんない。ほんの一瞬の動作、回避行動に移ったというその一瞬の隙に、ガープが目前に迫っていた。
既に拳を振りかぶっている。
――間に合わないっ!
慌ててガード……いや、ダメだ。ガードなんかじゃ、ダメ。
それが閃いた瞬間には足を地面に、文字通り突き刺して掌を腰だめに構えていた。
「魚真空手――」
「遅いわぁっ!」
わかってる。
カウンターなんか狙ってない。このタイミングなら相討ちすら無理。
だから――
歯を食いしばって、ガープが狙っている俺の腹に武装色の覇気を集める。
「ふんっ」
――耐えて見せる。
ガープの拳が腹部に直撃。
「っっっ゛」
ほとんど反射的に、くの字に折れてしまう。
吹き飛ばされそうになる。
「お゛」
ギリギリで耐えた。
胸から熱い何かが口内へと溢れてくる、血だ。
こらえきれず、吐き出す。
右腕にそれがかかってしまったらしくて、右手が燃えるように熱い。
視界が真っ白だ。
自分が何をしているのか、一瞬だけわからなくなった。
それでも、やらなければならないことがあると、心のどこかで理解していた。
体が勝手に動く。
「う゛……ぎっ゛!!」
自分が何を言っているのかもわからない。
けれど、その何かを反射的に叫んで、体に染みついていた何かを解き放つ。
「なっ!?」
これは誰の声だろうか。
それすらもわからない。
けど、確実に目の前から聞こえた。
ならばそれは、確かにそこにいる
きっと、いや、絶対に。
そこにいるそれに向けて――
すべてを貫く、師匠の奥義『武頼貫』を尊敬して、俺なりに編み出した奥義『楓頼棒』。
師匠のように、強い武をもった頼られる男に憧れて。
俺を守ってくれた父さんと母さん、育ててくれたベルメールさんにも憧れて。
楓頼棒の『楓』。
その花言葉には大切な思い出、というものがあるらしい。
だから、俺は大切な思い出を胸に秘めて、成長できるような男になりたかった。
一本の筋の通った、師匠のような男に、誰からも頼られるような、芯に一本の大きな棒があるような、そんな男になりたかった。
これは俺の集大成。
それを目の前にいる何かに向けて――
「楓頼棒!」
――放った。
「むっ……ぐぅっ!?」
誰
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