おまけ9話『壁に潜んだ黒い影』
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もそも今の俺では不可能。けど、今の俺にはわざわざガープの腕をしっかりと見極める必要がない。
「ふっ」
息を吐き、腕を振るう。
所作としては本当に簡単な動き。例えるなら一連の動きはまるで宙に舞う虫を払うかのような、そんなさりげない動作だ。だけど、そのさりげない動作で十分だ。振るわれた空気が、そのままガープの腕に絡みつき、自由を奪い取る。
それでガープの動きを封じ……「げ」思わず声を漏らしてしまった。
動きを封じたつもりなのに、からみついた空気をものともせずに拳を振るってくる。
どんな馬鹿力だよ!
言いたくなる言葉をぐっとこらえて、さらに腕を振るう。
「むぅ!?」
ガープから声が漏れて、けれどその拳骨があわや俺の頭に突き刺さるんじゃなかっていうタイミングで、俺という目標からずれたらしく、拳骨が大地に突き刺さった。
その拳にいったいどれほどの威力が込められていたんだろうか。
大地にひびが入り、島が揺れた。
うそだろ、おい。
大きな地震かと勘違いしてしまいそうなほどのその揺れに、俺は慌ててガープから距離をとる。
幸いなことにガープからの追撃はなかったので、一応はある程度の間合いをとることに成功した。
心なしか、視界の効きにくかった煙が晴れた気がする……これもきっとさっきの拳骨による風圧のせいだ。
とりあえず言わせてください。
「どんな拳骨だよ、馬鹿かよ」
俺の言葉……に反応したわけじゃないと思うけど、煙が薄くなったおかげで距離が少し開いたのにガープと視線がぶつかり合った。
どこか驚いていて、けれどどこか楽しそう。
ルフィやエースの家族繋がりがあることを感じさせる顔で、少しだけいたたまれなくなるけど、今はそんなところに感傷を寄せている場合じゃない。
今考えるべきは文字通り島を揺るがすほどのガープ拳の威力だ。
以前に戦った経験があるけど、それでもこれほどに威力のこもった拳は受けていない。というかこの威力の拳をもらってたら多分俺は今頃死んでると思う。『ルフィの仲間とて今度は容赦せんぞ』という、ついさっきガープが漏らしていた言葉はそのまんまの事実だったらしい。
あの時にも痛感させられた、最強という壁。その厚さを、今もまた痛感させられる。
きっと少し前までの俺なら心のどこかで敵わないとか思ってたんだと思う。
「……はは」
空気が、多分俺の心に反応して抗議しているんだろう、空気が震えて肌に振動が伝わってくる。
なんとなく、それが嬉しくて、笑い声を漏らしてしまった。
「……」
一度だけ深呼吸を。
安心してほしい。今の俺は違う。叶わないなんて、微塵も思わない。
空気の震えが止まった。それも
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