おまけ8話『新たなる火が灯る日』
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まだまだ海兵はたくさん存在していていて、今にも襲い掛からんと視線をぎらつかせている。おそらくはこうやって二人で対峙できる時間はほんのわずかだろう。
だがそれでよかった。
そのほんの僅かな時間が稼げればよかった。
ハントはどうしても白ひげに言わなければならないことがあるのだから。
ハントが白ひげの側へと体を寄せる。
そんなハントを、白ひげは是としなかった。
「さっさと……行きやがれぇ!」
それはきっと白ひげの親心だろう。
梃子でも動かないであろう形相のハントと押し問答をするつもりすら、白ひげにはなかった。
言葉とともに、能力は使わずにそのままハントを殴り飛ばそうと拳を振るう。
ハントにとってガード不能なほどに力がこもったその拳は、だが今のハントにはもう通じない。
拳の軌道上の空気を、引っ張り、ずらす。
それだけで、白ひげの剛腕がハントという対象から外れて、空を切った。
「!?」
驚愕の表情を浮かべた白ひげに、ハントはつかみかかる。
「あんた親父なんだろうが! 父親なんだろうがっ!」
――思い出す光景がある。
必死な形相で、白ひげへとつかみかかったハントが、一瞬だけ遠い目になった。
いつだって彼の脳裏に浮かぶその光景。それはもう彼の記憶としては存在していないはずなのに、心のどこかに焼き付いている。
3歳のころ、自分を守って犠牲になった父と母。
12歳のころ、自分たちを守って犠牲になろうとした、育ての母。
インペルダウンで、自分のせいで自身の思いを殺そうとした師匠という父。
それらの光景はあまりにも優しくて、嬉しくて、強くて、けれど寂しい。
だから、ハントは叫ばずにはいられない。
「父親のあんたが、子供たちを置いて死のうとすんな!」
ハントだからこそ、親と子供の関係に思うところがある。
――我慢できない。
「父親の仕事は子供を育てて終わりじゃないんだ! 最後まで仕事があるんだ! 子供に看取られて死ぬっていう仕事があるんだ!」
ハントだからこそ、親が自分を守るために死んでしまうということに、思うところがある。
――許せない。
「あんたが海賊だろうが四皇だろうが、そんなものしるかっ! あんたが一度だって父親を名乗ったなら、仲間のことをファミリーって、家族って呼ぶのなら! 最後まで仕事を果たせよ! 勝手に死のうとすんなっ! 父親の義務を果たそうとせずに家族を軽々しく語るなっ!」
ハントだからこそ、残された子供として、思うところがある。
――肯定できない。
「家族の絆を……なめるなっ! 最後まで無様に生きて、子供に心配かけろよっ!」
顔を寄せて、目に涙をためて。
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