おまけ8話『新たなる火が灯る日』
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てしまい、センゴクの命令により既に攻撃を再開している海軍に狙われてしまうことになるだろう。
「……」
それでも、ハントは動かない。
通り過ぎていく撤退していく仲間たちの声にすら、ハントはぐっと言葉を飲み込み、その表情に怒りを滲ませている。
あくまでも動こうとせずに、しかもなぜか怒りの色を見せているハントへとエースは再度言葉を吐き出す。
「オヤジの、命をかけた覚悟だぞ、ハント!」
「覚悟……覚悟……覚悟」
だが、その言葉がいけなかったらしい。何度も同じ単語を反芻して、ハントの感情がついに限界を超えた。
「覚悟ってなんだ……何が覚悟だ……何の覚悟だ……ふざけんなっ!」
これは、いったい誰に対する言葉なのか。
「ふざけんなっ!」
声をあげながら、ハントは足を漕ぎ出した。目指すは今、殿を務めているその男の背中。
「おい、ハント!」
「どこへ行く気じゃ!」
背中から聞こえてくる友人と師匠の声すらもほとんど聞かずに、ハントは走る。
「魚真空手、鬼瓦正拳!」
走りながら拳を振るえば、それに空気が応えてくれる。
今放った技は魚人空手陸式でいう若葉瓦正拳と、本質は変わらない。
違うのはその威力。
ハントの前方から白ひげのいる地点に存在していたすべての海兵を、まとめてなぎ倒し、そのほとんどを戦闘不能へと陥れる。まるで冗談のような光景だが、ハントの意識はそんなところには向いていない。
今もなお、肩で息をして、血をこぼしながらも、苦しそうに力を振るう白ヒゲの背中へと追いつき「俺は認めないぞ!」と叫びながらも、殺到してきた海兵をまとめて殴り飛ばす。
いきなり現れたハントに、白ひげは眉をしかめながらも己が武器を振るい、殺到する海兵たちをまとめて吹き飛ばしていく。
「さっさと行けと言ったのが聞こえてなかったのか、アホンダラぁ!」
まるで敵を威嚇しているかと思われんばかりに殺気がこもっている言葉を受けて、けれどハントはそれを睨み返す。
白ひげさんは確かに大海賊で、ハントは世話になった。ハントの師匠の大恩人だっていうことももちろん彼はわかっている。けれど、それとこれとはもはやハントにとっては関係のないことだった。
「……っ」
気に入らない。
ただひたすらに。
今のこの状況が気に入らない。
それが、ハントの率直な想いだった。
常人ならばそれだけ射殺せるであろう殺気のこもった視線にひるむことすらなく、ハントは魚真柔術でもって大気ごと、周囲一帯の海兵をまとめて投げ飛ばす。ぽっかりと、まるでここが戦場ではないかのようにすら思えるほどに誰もいなくなったその空間になり、二人の視線ががっつりとぶつかり合う。
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