おまけ7話『真なる力』
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できないはずのその瞬時の時間に、さすがは赤犬といったところだろう。ギリギリで態勢を取り戻し、その危機を既に察していた赤犬もまた技を発動させる。
両者の鋭い視線が交差したのは一瞬。
先に叫んだのはハント。
「魚真空手!」
新たな技へと昇華されたそれは、ハントが今まで足りなかったピースを埋めた。そして、そのピースこそがハントにとって唯一未完成だった魚人空手陸式の技をも完成させる。
それを本能で理解していたハントだからこそ、今まで未完だったはずのその技を今この場で放つということにためらいなど存在しない。それが完成されていることを疑いことすらもない。
「奥義!」
今からハントが放つのは今までのように、なんちゃって奥義ではない。
ハントが今までに学んだすべての技と、力と、心の集大成。
完成された真の奥義、それをハントは叫ぶ。
「楓頼棒!」
放たれたハントのそれ。当然だが、赤犬もまたそれに呼応するかのように赤犬もまた技を発動させていた。
「冥狗!」
ハントと赤犬の視線が再度交差し、裂ぱくの声が弾けて、そして黒く変色した掌とマグマの拳がぶつかり合う。
それはまるで、つい先ほどにあった光景だ。
ハントが奥義を放ち、赤犬に焼き尽くされた時の映像だ。
まるで焼き回しでしかないはずのその両者の二度目のぶつかり合い。
違うのは――
「ぐっ……ふっ!?」
――その結末。
技に秘められた単純な、いわゆる物理的な威力そのものにはおそらく大した差がなかったのだろう。楓頼棒というハントの掌と冥狗という赤犬の拳がせめぎあい、ぶつかったままの状態で止まる。
だが、赤犬の技は自然系の技で、つまりは彼の技が単純な物理の技で済むはずがない。
既に重い火傷の右腕が赤犬による更なるマグマによって焼かれ、そのままハントの全身へと広がり、焼き尽くしていく。武装色の覇気で最低限のガードはしているハントだが、それでもやはり赤犬のマグマはそれだけでダメージをシャットダウンしきれるものではない。
「っ゛ぅ゛」
苦痛からか、ハントがうめき声を漏らし、両膝を大地へとつく。
まるで降参しているかのようなポーズとなったハントを、何のダメージもなかったかのように見下ろす赤犬。
「ハント!」
ハントの背後から聞こえるジンベエやエースの焦りの声。
慌ててハントを助けようと動き始めているのだが、今からではもう間に合わないだろう。
この二人の2度目のぶつかり合いも結局は赤犬の勝利という結末――
「むっ!?」
――ではなかった。
とどめを刺すために拳をふりあげようとした赤犬が、体をピクリと動かしただけでその動きを
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