おまけ7話『真なる力』
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――……空気を引っ張った?
ハントよりも強い見聞色を発動できる人間たちが唯一、それを把握するが、それでも彼らの心は混乱に彩られている。理解のできない、けれど事実としてそういった行為をハントがしてみせた。
能力者でない人間が空気を引っ張るなどと、百戦錬磨の彼らとて理解のできる範囲の現象ではない。
「……」
違う。
ハントの何もかもが、違う。
雰囲気が違う。
やってのけることも違う。
そして赤犬の技をいとも簡単に防いで見せた……その実力すらも違う。
そう、違っていた。
赤犬が、いやその光景を見ていた誰もが驚いたその瞬間、ハントはすでに行動を開始していた。
――一緒に行こうぜ、相棒。
心の中で、これまで一緒に戦ってくれていた相棒へと語り掛けると、語り掛けられたそれがハントの心に答えるようにハントの肌へと空気を振動させる。力強いその返事にハントは笑みをこぼれさせて一歩だけ踏み込んだ。
ずっとハントを悩ませていた空気の違和感。その正体。
これが答えだった。
ナミに言われた言葉『私が保証する。あんたは強い。絶対に強い!』
ハントの中にあった、まだまだ自分は弱いという意識に光を差したそのナミの言葉以降、ずっと空気そのものがハントへと訴えかけていた。いや、空気がハントへと訴えかけ始めていたのはハントが空気という存在を強く認識できるようになった日から、魚人空手陸式を覚えたその時からずっとだろう。ただハントがそれに気づかなかっただけだ。ナミの言葉を受けて以来、やっとハントへと空気の想いが通じるようになり始めていた、ただそれだけのこと。
ずっとハントを支えていてくれた、ずっとハントとともに戦い続けてくれていた空気という存在、その心。
気を失っている時間に、やっとそれをハントは知ることができた、理解することができた。
空気という相棒の存在を、その心を理解したハントは、一歩だけ踏み込んだと同時に空気へと腕を伸ばす。
今ままでハントが用いてきた技、魚人空手陸式はただ空気というものをハントがより強く感じ取れるようになったからこそ用いることのできた技だった。だが、今のハントはその空気を感じるのではない、真に理解している。故に、ハントが大気の心を真に理解できたことにより魚人空手陸式という枠組みの技とは別のものへと昇華されており、だからこそハントはその新しい力を、魚人としての力と人間としての力を融合させて更なる高みへと成長させた力を、ハントは発動させる。
「魚真――」
もともとハントは魚人空手だけでなく魚人柔術も習ってはいる。水心を理解できないハントには決して発動できなかった魚人柔術だが、今から放とうという技は大気の心を理解して放つ技。
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