4部分:第四章
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あえず傘買ったら」
「バス停まで行くか」
「そうしましょう。雨が止むことはないでしょうし」
そのことはわかっているといった言葉だった。
「まずは傘を買って」
「だよな。それにしても」
ふと隆盛の言葉の感じが変わってきた。
「ここでも聞こえるな」
「そうね」
双葉は隆盛の言葉に頷いた。彼女にもその声は聞こえていたのだ。
「蛙の鳴き声がね」
「雨に蛙か」
彼は言った。
「これは絶対に揃うんだな」
「いいことよ」
隆盛に応えながら微笑んでみせてきた。
「雨が降るのはね。蛙が鳴くのも」
「水が降るからだよな」
「そうよ。雨は水だから」
言いながらまだ若かった時の母の言葉を思い出していた。今はもう見る影もなく太って肝っ玉母さんになってしまっている母の言葉を。
「水がないと。何もできないからね」
「それを考えたらこの雨もな」
「いいものでしょ」
「ああ。何かこの蛙の鳴き声が余計に気持ちよく聞こえてきたぜ」
隆盛も笑顔になっていた。双葉とは違ってはっきりとした笑顔だった。
「これからも。この鳴き声聞きたいな」
「そうね。これからもね」
二人で話しながら傘を買ってコンビニを出る二人だった。その二人の耳には今も蛙の鳴き声が聞こえていた。けろけろと鳴く蛙達の鳴き声が。
けろけろ 完
2009・4・2
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