「爺ちゃん探検隊」
[8]前話 [2]次話
保育園の年長から低学年にかけて、僕は爺ちゃんによく散歩に連れて行ってもらった。歩く時もあるし、自転車に乗せてもらってというのもあった。 そうそう爺ちゃんは道を知ってるくせに……
「この先はどうなっているかなあ?」
と、言っては僕の心をワクワクさせた。当時の僕は、本当に爺ちゃんが知らないと思っていたので、とんでもない興奮があったのだ。
僕たちは町の探検隊だった!
「ミズキ君。この先をまがると、どうなっているのかなあ?」
「ミズキ君。このまま、行くと道はどうなっているのかなあ?」
と、爺ちゃんは僕に聞いてきた。(そうそう家族の中で、なぜか爺ちゃんだけ僕を、君づけで呼んでいた)
思い起こすと、爺ちゃんは僕より楽しんでいるように見えた。僕が……
「もっと、行ってみよう!」
と、言うとすかさず……
「家に帰れなくなっちゃうかも」
と、爺ちゃんは答えた。探検隊に危険はつきものだ、僕の中でさらに探求心が湧いていった!!爺ちゃんとは町のあちこちを探検した。
「爺ちゃん!この橋、大丈夫〜?」
電車が真下を通るボロボロの橋に連れてってくれたり。
「うわああああああ」
長ーい下り坂では、悲鳴をあげて自転車で降りたりした。
「あっ!クワガタだ」
細い路地を行った所に、怪しげな虫屋さんを見つけたり。
「この飛行機、本当に飛ぶの?」
ラジコン屋さんに、2人で飽きる事なく居たりした。
「爺ちゃん、空がオレンジ色だよ〜!」
探検が終わると、にじむような夕焼けを背に家路に着いた。
◇◇◇
今はもう、爺ちゃんはこの世にはいない。大人になった今、僕は思う。爺ちゃんは……
ひとあし先に、あの世へ探検に出かけてしまったのだと。
おしまい
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ