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IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二十五話 覇者の矜持
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帝国暦 489年  1月 21日   ヴァルハラ星域  ヴァレンシュタイン艦隊旗艦 スクルド  アントン・フェルナー



正面のスクリーンに敵が映っていた。戦術コンピュータがモニターに擬似戦場モデルを映し出している。艦橋は静かだ、だが息苦しいほどに空気は硬い。誰もが表情を強張らせている。いつも冷静なエーリッヒも幾分緊張しているように見えた。

互いに三個艦隊が正面から向き合う形で進んでいる。ブラウンシュバイク公達の艦隊は我々の後方で待機だ。カストロプ方面に偵察部隊を送りケスラー提督達が本当にローエングラム侯から離脱したのかを確認している。確認が済めば戦闘に参加するだろう。だがそれにはかなりの時間がかかる筈だ。最低でも四日はかかるだろう。

艦橋にはエルウィン・ヨーゼフ二世も居る。誰よりも緊張しているのが彼だ。喉が渇くらしい、さっきから何度も水を飲んでいる。
「反乱軍との距離、三百五十光秒」
三百五十光秒……、相手はだんだん近づいて来る。艦内に流れたオペレーターの声は何処か上擦っていた。

「広域通信の準備を、良いな?」
エーリッヒの言葉は前半はオペレーターへの指示、後半はエルウィン・ヨーゼフ二世への確認だった。エルウィン・ヨーゼフ二世がぎこちなく頷く。非人間的な操り人形のような動きだ、こんな時だが吹き出しそうになるのを堪えた。

オペレーターが準備が出来たと報告してきた。エルウィン・ヨーゼフ二世がエーリッヒに視線を向ける、エーリッヒは頷くと“落ち着け、深呼吸をしろ”と言った。エルウィン・ヨーゼフ二世は頷くと大きく深呼吸を二度、三度とした。そして艦橋の中央に立つ。

説得が上手く行けば戦争は回避出来るだろう。エルウィン・ヨーゼフ二世がローエングラム侯達を説得する事はブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯、メルカッツ総司令官、そして各艦隊司令官も知っている。賭けなのだ、上手く行けばエルウィン・ヨーゼフ二世は皇帝として皆から認められる事になる。だが失敗すれば……、皇帝か……、皇帝も楽ではないな。

「皆、聞いて欲しい。予はエルウィン・ヨーゼフ二世だ。予は皆に謝る。予が幼く何も知らないから、皇帝として頼りないから、皆が争う事になった。そして大勢の人間が死んだ。予の所為だ、本当に済まぬと思う。予は皆に約束する、エルウィン・ヨーゼフ二世は良い皇帝になると約束する。だからこれ以上争う事を止めるのだ。予は誰も責めない、誰も罰しない。なぜなら罪は予一人に有るからだ。だから……、だから……」
声が詰まった。眼を真っ赤にして涙ぐんでいる。艦橋の皆も痛ましそうな表情をした。

「泣くな! 皇帝が泣いて如何する! 同情されて如何する! 皆の敬意を勝ち取れ! お前は皇帝なのだ!」
エーリッヒが叱咤した。エルウィン・ヨーゼフ二世を厳
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