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IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二十五話 覇者の矜持
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る事だけだ。エルウィン・ヨーゼフ二世の顔に絶望が浮かぶ。ヴァレンシュタインが歩き出した、ローエングラム侯に近付く。艦橋の空気が強張った。

「ジークフリード・キルヒアイスは死んだ、グリューネワルト伯爵夫人も死んだ。直接手を下したわけでは無いが私が殺した、そういうふうに仕向けた」
ローエングラム侯がヴァレンシュタインを睨んだ。ヴァレンシュタインが更に近付く。

「そしてローエングラム侯が銀河帝国皇帝になるという夢も潰した。侯の大切なものを全て私が無にした」
「貴様……」
低い声だった。憎悪が滲み出ている。声だけではない、顔にも憎悪が出ている。ヴァレンシュタインが止まった、距離は五メートル程か。こちらの表情は少しも変わらない、穏やかなままだ。

「簒奪か、新しい王朝を創る。美しい夢だ、いや夢だから美しいのかもしれない」
「……」
「六年、いやもう七年前になるか。初めて侯を見た時に分かった。最終的には他人の下風に立つ男ではないと。そしてブラウンシュバイク公爵家に仕えた時、何時かブラウンシュバイク公爵家は侯と戦う事になると思った。だから勝つために準備した」 
声も穏やかだ、何かを懐かしんでいる様な響きが有った。

声は穏やかだが誰も動かなかった、皆固まっている。当然だろう、七年前にこの内乱を予想したなど誰も信じられないに違いない。だが共に戦った自分には分かる、ヴァレンシュタインは間違いなくこの内乱を想定して準備していた。その事はクレメンツ、ファーレンハイトも分かっていた。

ローエングラム侯はじっとヴァレンシュタインを見ている。そしてヴァレンシュタインは淡々と言葉を紡ぐ。
「歴史家はこの内乱を門閥貴族とリヒテンラーデ公、ローエングラム侯の間で行われた権力争いと記すかもしれない。だがそれは真実ではない、この戦いは私と侯の戦いだ」
「……」

「もしかすると自裁したかと思っていたが……、生きていたならば仕方が無い。決着を付けようか、ラインハルト・フォン・ローエングラム」
「私と卿でか?」
ローエングラム侯が問いヴァレンシュタインが頷いた。
「エーリッヒ・ヴァレンシュタイン、一対一での戦いを所望する」
そう言うとゆっくりと上着を脱いだ。









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