短編46「ごめんねって言いに来た」
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男の子の話を聞きながら、なんだか忘れている事があることに、僕は気がついていた。そうだ、僕はこれを言うために来たんだった。
「ねえ、僕らが会った場所に行こう!」
僕はそう言った。僕らは公園に向かった。中央に大きな池がある公園。僕はその池のほとりで、段ボールに入れられ捨てられていた。その時、僕は赤ちゃんだったので、それ以前の記憶はなかった。そこに男の子がやって来て、パパとママに相談し、僕を飼う事になったのだ。
「僕はご主人に飼ってもらって嬉しかったよ」
僕が言うと、男の子は涙ぐんでいた。
「お前と居て楽しかった。一緒にいてくれてありがとう」
男の子が僕に言った。なんとなく、これで『最期』というのが分かったのだろう。
「ごめんね」
僕は、男の子に言った。
「僕ね。僕が死んでから、ご主人がとっても悲しくなるのを見て、僕も悲しくなったんだ」
男の子が僕を、ギュッと抱きしめた。
「ずっと悲しい気持ちにして、ごめんね」
僕が言うのと同時に、ポタポタと僕の頭の上に落ちて来るものがあった。男の子が声を押し殺して、泣いているのが分かった。
「ごめんね!って言いに来たんだ。ごめんねって言うの忘れてたからやって来た。でも言えたから僕、行くね。……バイバイ!」
僕は、男の子の腕をすり抜けた。あっそうだ!これも言わなくちゃいけなかった。僕は、振り返って男の子に言った。
「僕は居なくなっちゃうけど、また新しい犬を飼って、可愛がってあげてね!!」
そう言うと僕の心が、すっきりとした気持ちになったのを感じた。僕の体は薄暗く輝くと、足元から次第に消え出した。
「バイバイ、ご主人様」
僕はそう言うと、暗闇の向こうに見える、明るい光が輝いている所に向かって、駆け出していったのだった。そして願った。
どうかご主人に……
笑顔が、満ち溢れますように!
と。
おしまい
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