一話:別れと出会い
[6/7]
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
えっとここは日本っていう国ですけど……アルフは聞いたことある?」
「アタシもそんな国は聞いたことないよ」
「なん…だと?」
その返事に彼は頭を抱える。様々な憶測を立てるがどれもしっくりとくるものは無い。てっきり別の分史世界にでも来たのかもしれないと思っていたのだがその線も薄いだろう。これから、どうするかと彼は考えようとしている自分に気づき未だに生に未練があるのかと内心で自嘲気味に笑う。
もう、自分は死んだのだ。生きているのだとしても死んだことには変わりがないだろう。そう思った彼は考えるのをやめて目を閉じる。そんな様子にフェイトはオロオロとしてアルフに目をやる。アルフの方もどうしたものかと考えているが案は浮かばない。そんな時、フェイトの頭にある考えが閃く。
「あの……えっと……」
「ん? ああ、そう言えばまだ名乗っていなかったな。私の名前は……ヴィクトル」
彼は少し迷った末にその名前を名乗ることにした。彼の本名はヴィクトルなどではなくルドガー・ウィル・クルスニクだ。だが、彼は妻を失い生まれ変わりを望んだ時からその名前を封印した。娘に感づかれることなく正史世界から本物の自分を誘き出すために。そのために彼が名乗った名が最強の称号でもあるヴィクトルだった。別に今となっては本名を名乗ってもいいのだが彼は自分にはその名を名乗る資格がないと思いヴィクトルと名乗ることにした。
「…私も改めて自己紹介しますね。私はフェイト・テスタロッサです。それと……あの子は使い魔のアルフです。えっと……ヴィクトルさん。もし行くあてがないのならしばらくここにいませんか?」
「っ! ……いいのか?」
「フェイトがいいって言っているんだからいいに決まってるだろ」
フェイトの申し出に仮面の下の目を見開いて驚くヴィクトルにアルフが何故か少し噛みつくように続ける。そんな二人の言葉にヴィクトルはしばらく考えた後、そうするのが現状一番の選択だろうと決断し、口元に微笑みを浮かべて口を開く。
「何から何まですまない。……これからよろしく頼むよ」
「それじゃあ…よろしくお願いしますヴィクトルさん」
「ま、出て行きたくなったら出て行っても構わないけどね」
ヴィクトルの言葉に嬉しそうな笑みを見せるフェイトだったが、アルフがすぐに空気を読まない発言をしたのでムッとしたように睨みつける。ヴィクトルはそんな様子にさらに穏やかな笑みを浮かべる。暖かな空間。
まるで、自分のアイボーが居た時のような懐かしい感覚。それが彼にとっては何よりも嬉しかった。なぜ、自分がまだ生きているのか。なぜ、彼女達と共に過ごすことになったのかはまだ彼には分からない。だが、ある種の確信も抱いていた。
彼女―――フ
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ