一話:別れと出会い
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仮面が僅かに動くのを感じ、そこで初めて自分が仮面を着けていることに気づく。彼が最後に覚えている記憶では間違いなく自分は仮面をしていなかった。その事に疑問を覚えて何気なしに仮面に触ると不意に二人がばつの悪そうな顔を浮かべる。
「あの……ごめんなさい。悪気はなかったんです」
「あ、あんたが怪しい仮面着けてるからつい取っただけだよ」
「で、でも右側しか見てませんよ!」
「ああ……あれを見たのか」
フェイトとアルフにそう言われて彼は納得する。彼女達はあれを、仮面の下のどす黒く染まった時歪の因子化を見てしまったのだろう。まあ、普通に考えれば人を看病するときに仮面を着けたままにすることはないだろう。アルフの言う通りこの上なく怪しい。人間の心理としてまず、仮面の下を覗かないという事は無い。だから、彼女達に非は無い。むしろ、明らかに怪しい人間なのにもかかわらずに助けてくれた彼女達に感謝の念と謝罪の念が湧き上がる位であった。
「すまない……怖かっただろう」
「そ、そんなことないです! それより私達の方こそ何も考えずに仮面を取ってごめんなさい」
「君達が謝る必要などない。これは自業自得で負った傷なのだから」
彼は仲間達と兄と父を皆殺しにしたときの事を思いだしながら、相手を傷つけてしまったと、シュンと落ち込んでいるフェイトの頭を娘と同じように優しく撫でる。時歪の因子化したのはあの時、一族に伝わる力―――骸殻を使いすぎたためだ。
その時から彼の寿命は大きく削られてしまった。娘の成人も見る事が出来ない程に彼の余生は短かった。それもまた生まれ変わりを望む要因だったが今となってはどうでもいいものだと彼は心の中でそう結論付ける。しかし、それとは別に気になることも彼にはあった。
体が軽いのである。身体中を蝕んでいた時歪の因子化の痕は残っていると言うのにそれに伴う痛みはない。もしかすると、症状だけでも治ったのかとも思ったが、相変わらず右目は見えない。それに一時的に痛みが止まっているだけかもしれないと結論付けて彼は撫でられ続けてトマトのように顔を赤くしている少女に意識を戻す。
「さて、一先ずここがどこだか知りたいのだが、まずエレンピオスとリーゼ・マクシアのどちらの国か教えてくれないかい?」
エレンピオスとは彼の生まれ故郷である国でリーゼ・マクシアは以前までは巨大な壁のような物で覆われてエレンピオスとは違った独自の文化を発展させてきた国である。二つの国は、今はかつての仲間達の尽力により繋がり合っている。その為に彼はどちらかと聞いたのだ。しかし、二人の反応は彼の予想外の物だった。
「……エレンピオスとリーゼ・マクシア?
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