暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのは〜過ちを犯した男の物語〜
一話:別れと出会い
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そもそも死んだのであれば自分が死んだと確信することすらおかしいのではないのかと彼は疑問に思う。そして、今疑問に思っているという事は自分がどこかに存在しているという証拠に他ならない。

意味は違うかもしれないが我思う故に我あり、なのだから。ひょっとするとここはあの世なのかと考える。地獄にしては暖かすぎるが自分が天国に行けるような人間であるなどと彼は己惚れてはいない。自分は地獄に落ちて当然の事をしでかしたのだから。そこまで考えたところで今度は自分の頬に何かが触れる感触を感じる。そこで彼は自分に肉体があることを確信する。そして、まるで開けるのを拒むかのように重い瞼をゆっくりと開けてみると赤い瞳と目が合った。


「あ……目が覚めましたか?」

「ああ……ありがとう」


自分が目を開けたことに微笑む、娘と同じ位の年の金色の髪の少女に彼は状況が全く分からないままであったがかすれた声で礼を言う。それは自分の頬に温かさを与えてくれたのが少女の手の平だということに直感的に気づいたからである。そして、彼は自分が置かれている状況を改めて確認する。

飾り気のない部屋に、ベッドに入った自分。その隣にいる看病をしてくれたのであろう少女。自分はこの少女にどこかで倒れていた所を助けられたのだろうと彼は自分の経験からそう推測する。願わくば、この少女が治療費をふっかけてくることがないことを祈ろうと、密かに男は思っていた。


「君が私を助けてくれたのか。改めて礼を言わせてもらおう、ありがとう」

「え、えっと……そんなに頭を下げないで下さい。それにお礼ならアルフにも言ってください。ここまで運んでくれたのはアルフですから」


大の大人に頭を深々と下げられたためか、少し混乱して顔を赤くした少女は部屋の隅で二人の様子をジッと見つめていた強い光を秘めた青い瞳に腰まで届く、毛先まで整ったオレンジ色の髪の女性に助けを求める様に目を向ける。そんな視線に女性は軽くため息を吐きながらも仕方がないとばかりに口を開く。


「別に、アタシはフェイトに言われて運んだだけだよ。礼ならフェイトだけで十分さ」

「いや、お嬢さんも私を助けてくれたことには変わりがないさ。ありがとう」

「……フン。別に礼を言われるほどの事なんかやっちゃいないさ。それよりもその呼び方変えられないのかい? こそばゆくて仕方がないんだよ」

「ふふ、ではアルフと呼んでいいかね?」

「そっちの方が助かるね」


礼を言われたことに素直ではない反応を見せるアルフに彼は子供の様な印象を受けて面白そうに笑う。そして、隣のフェイトもその様子に微笑ましそうに頬を緩ませる。そこで、彼はまだここがどこかを聞いていなかったと思い出し、顔を引き締める。

その時、彼は自分の顔の上にある
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