原作開始
クラス代表決定戦
トラウマ……
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教室に入ると、クラスメイトはほとんど揃っており、始業のチャイムまでの時間を個人個人で潰していた。見回すと、目当ての人物である布仏本音を見つけると、話しかけた。
「布仏さん……で、合ってるよな」
「ん? おー、かなちゃんじゃないかぁ。私に何か用かい?」
「ちょっと待て。かなちゃんってのは……もしかして俺の事か?」
「もしかしなくても、そうだよ〜?」
かなちゃんって……それは……
「止めろ! 止めてくれ! それは! それだけはぁ!」
「わあ! びっくりしたぁ、どうしたの?」
「うお、何ごとだ? ってまさか、布仏さん」
「なんだい、いっちー」
「いっちーってのはたぶん俺のことなんだろうな。そしてそのノリから察するに、彼方のことを大方『かなちゃん』って呼んだんじゃないか?」
「おー! すごいね、いっちー。名探偵だ」
「こいつ小さいときに埜ヶ香さん……彼方のお母さんからかなちゃんって呼ばれてて、それがトラウマになってるんだよ。女みたいに思われるからやめてくれって言っても聞く耳を持ってくれなかったらしい」
「だから母さん、かなちゃんはやめろって言って……うがぁぁあああ「あんたはいい加減そろそろ落ち着きなさい!」あべしっ!?」
錯乱中に誰かにどつかれて生還した。いったい誰なんだ俺の救世主は、と思いながらそこには楓が立っていた。
「なんだ、楓だったか」
「『なんだ、楓だったか』じゃないわよ。あんたまだそのトラウマ克服してなかったの?」
「克服しかけてたところにこの世界でも呼ばれたら、克服出来るものも克服できんわ……」
「なるほど……そりゃご愁傷様ね。埜ヶ香さんには前世の記憶はあるの?」
「いや無い……と思う。さすがに確認したことないからなぁ。仮に記憶がなかったとして、『母さん、前世の記憶ってある?』って訊いたら精神科コースまっしぐらだろ?」
「ああ……確かに」
「でも母さん、俺の違和感には気づいてる感じだから、あってもおかしくないんだよな……親の勘ってやつなのかもしれんが。その内訊いてみることにするわ」
「そうした方が、下手に気負わなくていいんじゃない?」
「そうだな、そうすることにする。まあ、無かったら俺が精神科に行くだけだ。問題ない」
「いやいや、むしろ問題しかないでしょ」
「はは、こういうのなんか懐かしいな。ありがとな、楓。やっぱお前がいるのといないのとじゃ大違いだ」
楓といると、あの世界での調子になる。楓は俺のことを何でも知っていて、俺は楓のことを何でも理解していた。それだから、まるで精密機械の歯車のように俺たちは噛み合っていた。
「いいわよ。私だって彼方にまた会えるだなんて思ってなかったし、また会えて、こうやって話すことが出来て嬉しい。またあんたと一緒の時間を過ご
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