おまけ2話『師弟』
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が解放された。そのアーロンがハントの故郷の人々を苦しめた。それがジンベエの罪だというのなら8年間もそれを見逃すことになったのは間違いなくハントの罪だ。
もしもジンベエに素直にそのことを告げることが出来ていたら、それだけでもっと故郷の人々は早くに解放されて、きっと失われた命も少なかっただろう。
だから、一人だけで背負おうというジンベエは間違っている。少なくともそれはハントも一緒に背負うべき問題で、だからこそハントはとりあえずの今はその問題を棚上げにしてジンベエへと言葉を紡ぐ。
「だから! まだみんなに謝る前からそんな、そんな自分を傷つけるようなことはやめてくれよ! 謝って謝って、償おうとして……それでも許してもらえない時に、それからのこととかの難しいことを考えるんじゃだめなのかよ!」
「……」
ぐ、と言葉を呑みこんだジンベエに、ハントは悲鳴のような声で叫ぶ。
「あんた、俺の師匠だろうが! 変なところで弱気になるなよ! 勝手に一人で変な荷物を背負って大事な荷物を捨てようとすんなよ! 俺はそんな背中に憧れたんじゃないんだよ! 最後まで自分の守るべき筋を守れよ! 師匠!」
泣いてはいない。
けれど、ハントの心が悲鳴をあげている。
それは故郷の人々への罪の意識でもあり、師匠のジンベエが自分のせいで白ヒゲを裏切ろうとしていることへの罪の意識でもあり、何よりもそんな自分が何もできないことへの罪の意識でもある。
「……」
長い。
「…………」
長い沈黙の後。
「………………はぁ」
ジンベエの無言の溜息が落ちて、それが答え。
「やはり反対させてもらおうかのう」
「師匠!」
「なに!?」
聞こえた言葉に、ハントとマゼランの二つの感情が交差した。
以降、ジンベエは再びエースの処刑に協力するようにと拷問される日々を送り、ハントはまたレベル5の極寒地獄。そこの檻に収容されて凍りゆくような冷気を見つめる日々を送る。
フロア一つを挟んでそれぞれの日々を送る師弟の顔は、真剣そのもの。その胸に秘める思いは、エースの処刑を止めること。
脱獄してでもそれを成し遂げようという彼らの日々は、ただしそれでもインペルダウンは脱獄不可能な監獄で。
彼らはただただ脱獄へと結びつかない日々を送っていく。
時間は冷静だ。ハントやジンベエたちの感情など全く関係なく時は流れていく。
淀まず、溜まらず、下っていく静かな水のように。
それは止まらない。
止まることを知らない。
流れる時の中で、それは往々にして穏やかで落ち着いたものだが、時というものはその時によって姿を変える。
そう――
「……」
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