おまけ1話『インペル、入っぺる』
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――覇気!
内心で舌を巻きつつも、だったらとハントも容赦なく覇気を発動。
相手はハントによって避けられた蹴りの勢いをそのままに今度は軸足を変えて、空手でいう後ろ回し蹴りをこれまたハントの顔面へと放つも、それをハントは屈んで避けながらその軸足を蹴り払った。
「うお!?」
完全に体の芯を乗せていた軸足を蹴り払われ、たたらを踏む相手。そこにハントの脚が真っ直ぐな軌道を描き、足の小指側の側面――いわゆる足刀蹴り――が顎を蹴り飛ばした。そのまますさまじい勢いで檻の壁へと激突……せずに相手の男はなんとそこから見事な身体能力を発揮する。
ぶつかりそうになった瞬間に体を反転、檻の壁を蹴り「きえーーーっ!」という奇声と共に壁の勢いを利用した飛び蹴りで今度こそはハントの顔面を蹴り飛ばそうとする。ただしそれも、やはり無駄。そのしぶとさには僅かに驚いたハントだがそもそもの身体能力が違いすぎて勝負にはならない。
「魚人空手陸……しき?」
一気に決めてしまおうとしたハントがいつものように身構えて、だがそこで覚えた違和感に眉をひそめた。動きを止めそうになったハントだが相手は既に目の前にまで迫っており、その違和感に思考をゆだねる時間はない。
「4千枚瓦回し蹴り!」
一応の手加減と共に相手の飛び蹴りを、回し蹴りで迎え撃った。結果は――
「うげふっん!」
――ハントの圧勝。
またもや凄まじい勢いで檻の壁へと弾き飛ばされて、今度こそ壁に激突。これで喧嘩は終了。
「……あ、アニキっ!」
「く、くそぉ! てめぇ! アニキに何しやがんだ!」
「……え、俺? 俺が悪いの? マジで?」
慌ててアニキという男へと駆け寄る二人の男の背中を見つめながら、ハントはがっくりと肩を落としつつも、だがあまり気にしてはいなかったらしく、手錠で繋がれた己の両手を見つめて首を傾げた。
――なんだ、今の……違和感?
手錠のせい……というわけではない。どうやらこの手錠は海楼石らしいが、ハントは非能力者で関係ないし、そもそも海はハントの得意なフィールドでもある。手錠が海楼石入りかどうかはハントにとって関係なく、自由を拘束するということ以外には何の効果も及ばない。
かといって手が拘束されていたから感じた違和感、というわけではない。手が拘束されているならいるで、それなりの戦い方をするのは当然で、今更そんなところで違和感に覚えるわけもない。
「アニキぃ!」
「くっ、大丈夫だ! 意識はねぇみてぇだが死んじゃいないようだぜ!」
「っくそ! なんなんだよ、ひ弱そうな奴が来たと思ったのにアニキがやられちまうなんて!」
ひそひそと聞こえる声すらも今のハントの耳には届かない。
魚人空手陸式は淀みなく発動
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