おまけ1話『インペル、入っぺる』
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こと切れてしまっているらしく動く気配はない。
なぜ囲まれているのか?
別にハントが何かをした、というわけではない。マゼランがいなくなり、ハントが内心で他の囚人に挨拶をするべきか、けど相手は海賊だからあんまりそういう気分でもないなぁなどどひたすらに考えているうちに気付けば周りを囲まれているという状況になっていたのだ。
「挨拶したほうがいいのか、この状況は?」
「……」
自分を正面から見つめるロン毛の男へと尋ねるも返事はなし。ニヤニヤとどこかいやらしい笑みを浮かべてハントをただ黙って見つめている。他の二人も同様だ。
ハントが注意深い人間であれば、この時点で周囲へと目を配って、こと切れてしまっている囚人たちは皆一様に支給されているはずの囚人服を着ておらず、その分ハントの前に立つ3人の囚人たちが服を重ね着しているという事実に気付けるのだろうが、残念ながらハントにはそこまで機転の利くような注意力は存在せず、ただひたすらに首を傾げている。
「おう、お前」
「ん?」
右から聞こえてきた声にハントが振り向いた時、左にいた男が手錠で繋がれているその両手でハントへと殴り掛かっていた。
これが彼らの手口なのだろう。
こと切れている囚人の服が服を着ていないのも元々この3人が彼らの服を奪い取ったから。さすがに1対3ではどうしようもなく、さらにはこのフロアで身ぐるみを剥がされたとあってはいくらなんでも生きていくことは難しい。
彼らの狙いは問答無用で新しく入ってきた囚人、もとい新しく入ってきた一枚の囚人服とその下着で、ただそれだけ。これまで通りで、これからもその通り。その予定が狂うことは無い……はずだったのだが。
「ほっ」
「うっ、げほぉ」
残念なことにハントには通じない。
まるで殴り掛かってくることがわかっていたかのような動きで相手の一撃を避けてそのまま殴り掛かってきた彼の腹を膝蹴り。相手が油断していたのか、ハントの一撃がそれだけ強力だったのか、それともその両方か。ともかくその男はそれだけで悶絶して動かなくなった。
うめき声が聞こえていることから気を失ったわけではなく、そのまま死ぬということはなさそうだという事実をなんとなく見下ろしたハントは、今度は正面の男と先ほど声をかけてきた右の男へと視線を移す。
「ふざけやがってっ!」
「死ねや!」
「……逆切れだろ、それ!?」
罵声と共に襲い掛かってきた二人の男に少しだけ落ち込んだ様相を見せつつも、ハントの動きはそれとは裏腹にやはり正確。右の男からのタックル、それを顔面を蹴り飛ばして跳ね返し、次いで正面の男からのなかなかに鋭い自分への顔面への黒い足の蹴りを、ハントは僅かに顔を後ろへと引くことで紙一重に回避。
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