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バード
4部分:第四章
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第四章

「このことはです」
「あの、しかし」
「何故歌で?」
「歌が利いたのでしょうか」
「聴こえるからです」
 彼はにこりと笑って一同に話した。
「この化け物は音を聴くことができましたね」
「はい」
「それもかなり鋭かったです」
「だからです。それを使いました」
 こう話すのだった。
「そういうことです」
「それでこうなったのですか」
「何と」
「音が聴けるからこそ」
「音が聴ける、それならば」
 さらに話すラディゲだった。その言葉が続く。
「歌も音楽も聴けます」
「それならばですか」
「避けられないというのですね」
「はい、そうです」
 まさにその通りだと。さらににこりとしていた。
「だからこそこうして退治できました」
「本当に退治できない化け物はいないんですね」
「まさかと思いましたが」
「こうして」
「聴こえるなら必ず退治できると確信しました」
 ラディゲが指摘したのはこのことだった。
「そういうことです」
「ううん、剣も魔法も利かなくても」
「それでも退治できる」
「勉強になりました」
「それでは」
 ここまで話してであった。ラディゲはさらに話してきた。
「約束通り」
「はい、お酒ですよね」
「それですよね」
「そうです。報酬は都で貰えますし」
 このことも忘れていなかった。これで生計を立てているから当然である。
 そのうえでだ。彼は村人達にこうも言ってきたのだった。
「それでお酒の他には」
「お酒の他には?」
「何をご所望でしょうか」
「私の歌とハープを聴いて下さい」
 彼が今言うのはこれだった。
「宜しければ」
「歌とハープをですか」
「それをですか」
「村に平和が戻ったお祝いに」
 それで歌い奏でるというのである。
「聴いてもらいたいのですが」
「あの、それでいいんですか」
「私達が聴かせてもらうだけで」
「どうか御願いします。バードというものはです」
 彼のその職業についても話すのであった。
「聴いてもらってのものですから」
「それでなのですか」
「ここで」
「はい、聴いて下さい」
 また言う彼だった。
「どうかここは」
「わかりました、それでは」
「聴かせてもらいます」 
「是非共」
 老人も村人達もだ。笑顔で応えたのだった。
 そうしてだ。ラディゲも彼等のその言葉を受けてだ。
「それでは」
「御願いしますね」
「平和が戻った歌を」
「歌わせてもらいます」
 老人や村人達に対して恭しく一礼する。その動作は優雅であるがそれでいてコミカルでもある。そうした実に不思議な仕草であった。
 その歌はだ。実に見事なものだった。
 この歌もそしてラディゲのこともである。その名を広く知られることになった。
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