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とあるβテスター、奮闘する
挿話
とあるβテスター、人形遣いと出会う
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してしまう。
なんというか―――変わった人だ。
確かに安全エリアはモンスターが湧く心配はないけれど、だからといって一人で昼寝するのはあまりにも無防備なんじゃないだろうか。

“安全”という言葉が含まれていることから誤解されやすいのだけれど、ダンジョン内に存在する安全エリアというのは、あくまでも“モンスターが湧かない”というだけの空間だ。
安全エリア内での戦闘行為自体は禁止されていないし、攻撃をされれば普通にダメージを受けてしまう。
今まさに僕たちが勘違いしていたように、もし何らかのバグで安全エリア内にアクティブモンスターが湧いてくるようなことがあれば、寝ている間に攻撃されてしまう可能性があり、安全なんて名前が付いていても、決して手放しに安心できるような場所ではない。
第1層の頃に臨時パーティメンバーだったレイピア使いの少女―――アスナが一時期、迷宮区でソロ狩りをしながら毎日安全エリアで寝泊まりしていたという話を聞いた時は、なんて無茶苦茶なことをするんだろうと思ったほどだ。

また、その他にも―――というかこれが一番の懸念材料なのだけれど、モンスターと同様にプレイヤー同士による戦闘行為も有効なため、万が一にでも睡眠時を狙ってPKされるということがないように、仮眠を取る場合は交代で見張りを立てておくというのが暗黙の了解となっている。
とはいえ、それも見張りを担当するプレイヤーに裏切られてしまえばそれまでなので、こちらもよっぽど信頼できる相手でない限りはやめておいたほうがいいだろう。
こういった事情があって、仕様があまり知られていなかったサービス開始初期の頃ならともかく、最近では安全エリアで睡眠を取るプレイヤーはほとんどいない。
街と狩場を行き来する手間はかかっても、命には代えられないのだから当たり前といえば当たり前だろう。

だというのに、この女性プレイヤーは一人で昼寝していたのだという。
肝が据わっているといえばいいのか、それとも無謀というべきか……。

「おねーさん、ひとりで寝るのは危ないよ?」
「そうですよ。いくら安全エリアだからって、見張りも立てずに眠るのは無謀すぎます」
「御忠告ありがとう、可愛らしいお嬢さん達。だけど、私のことなら心配いらないよ。さっきも言った通り、私にはこの子がついているからね。この部屋に私以外のプレイヤーやモンスターが近付いてきたら、その時はすぐに私を揺り起こしてくれるように言ってあるんだ」
僕とシェイリが揃って忠告すると、女性は何も心配する必要なんてないとでもいうように、膝に乗せた西洋人形の頭をぽんぽんと撫でた。

「そうなんだ!ぺんちゃん、すごいね〜!」
「ははは、そうだろうそうだろう。ぺんぺん丸は私の優秀な相棒だからね。なんなら君も頭を撫でてみるかい?」
「うんっ!」
飼い主
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