挿話
とあるβテスター、人形遣いと出会う
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もいかないので、僕とシェイリはそれぞれナイフと両手斧を構えた。
誤植かバグか。どちらにせよ相手の補足範囲に入ってしまった以上、戦わないわけにはいかない。
僕とシェイリはどちらも武器の相性は悪いけれど、レベル的には十分に安全マージンを確保しているので、クリティカルヒットさえ貰わないように気を付けていれば、強敵といえどもごり押しでなんとかなるだろう。
「じゃあ行くよ、シェイリ―――」
「ちょっと待ちたまえ、君達」
「――え?」
攻撃態勢に入ったシェイリに戦闘開始の合図を出し、投剣による先制攻撃を仕掛けようとしたところで。
シェイリのものではない女性の声が割って入り、驚いた僕は、発動しかけていたソードスキルの始動モーションを中断した。
隣のシェイリも構えていた斧を下ろし、不思議そうな顔で辺りを見回している。
「ああ、すまない。ここだよ、ここ」
声のした方向に目をやると、部屋の奥に設置された本棚の陰から、一人の女性プレイヤーがひょっこりと顔を出していた。
ぼさぼさの黒髪を鎖骨のあたりまで垂らし、黒いコートの下に中世貴族のようなゴシックジャケットを着込んでいる。
下半身には黒のレザーパンツを履き、編み上げのロングブーツにインさせていた。
身体のラインが強調される衣装に身を包んでいることもあって、全体的にスレンダーな印象を受ける妙齢の女性だった。
本棚の陰は入口からだと死角になっていて、声をかけられるまで全く気が付かなかった―――というか、すぐ近くにモンスターがいるというのに何をやっているんだろう、この人。
「えーっと……そんな所にいたら危ないですよ。バグか何かはわかりませんけど、モンスター湧いてますし」
「ああ、それなら心配には及ばないよ。その子は私の友人だからね」
「え?」
言われて、視線を西洋人形へと戻せば。
小さな頭の頭上に表示されたカーソルは、モンスターを表す赤色ではなく、目の前の女性プレイヤーと同じ緑色をしていた。
モンスターであるにも関わらずカーソルがグリーンで、こうしている間に僕たちに攻撃してくるということもない。
つまり、この小さな人形は―――
「テイミングモンスター……ですか?」
「ご名答。その子は私がテイムした人形《パペット》でね。名前はぺんぺん丸だ」
「………」
あまりにもミスマッチすぎる名前に絶句してしまった。
どう見ても西洋の女の子を模した人形なのに、ぺんぺん丸って。どういう名付け方をしたらそうなるというんだ……。
「昨夜は少しばかり寝不足でね。その子に見張りを任せて私は昼寝と洒落込んでいたんだが……どうやら君達には勘違いさせてしまったようだ。友人として謝罪しよう」
「は、はぁ……」
そう言う間も欠伸を噛み殺したような顔をしている女性に、僕は思わず気の抜けた声を漏ら
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