挿話
とあるβテスター、人形遣いと出会う
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もうか」
「はーい」
昨日購入した『アルゴの攻略本・第29層完全版』に掲載されているマップデータと照らし合わせながら、薄暗い廊下を進んでいく。
廊下の突き当りを左に曲がって、3つ並んでいるうちの2番目の部屋が安全エリアに設定されているらしい。
このだだっ広い洋館には似たような通路が多く、存外ややこしい造りになっているので、こういう時は攻略本の存在がありがたい。
流石に第1層の時のように無償というわけにはいかなかったけれど、このホラーハウスを何の当てもなく歩き回ることを考えれば、多少の出費は惜しくなかった。
強いて言うなら、ここの人形が非常に不気味であることも書いててくれれば尚よかったのだけれど。
そんなこんなで安全エリアである部屋の前まで辿り着き、ドアノブを回して扉を引いた―――次の瞬間。
「げっ!?」
「あれー?」
部屋の中に佇んでいたものを見て、僕とシェイリは二人揃って素っ頓狂な声を上げてしまう。
ようやく休めると思って気を抜いていた僕たちの目に飛び込んできたのは、身の丈40cmほどの西洋人形だった。
アルゴの攻略本によれば《ボーパルパペット》という名前らしいそのモンスターは、部屋の外を徘徊しているマリオネット達に比べて生息数が少なく、ちょっとしたレアモンスター扱いとなっている。
ちょこまかと動く小さな身体に、金糸のようなツインテール。どこかの国の民族衣装のようなフリルのたっぷりついたドレスを着ていて、一見すると可愛らしい人形のように思えるけれど、《首狩り人形》という意味を表す名前の通り、小さな手に持った手鎌《シックル》による素早い斬撃を得意とするモンスターだ。
小柄なためか攻撃力自体はそこまで高くないものの、素早い動きで的確に首筋を狙ってくるため、攻撃力の数値以上のダメ―ジを与えてくる強敵―――なのだそうだ。
どうしても振りが遅くなってしまうシェイリの両手斧とは相性が悪く、投剣スキルによるダメ―ジも通りが悪いとのことで、斧槍使いのリリアがいるならまだしも、二人だけの時はなるべく遭遇したくない相手だった。
「ユノくん。ここって安全エリアだよね?」
「そのはずだけど……」
そんな西洋人形が、何故か安全エリアであるはずの部屋に陣取っていた。
部屋を間違えたのかと思ったけれど、手元の攻略本に記載されているマップデータでは、間違いなくここが安全エリアだとされている。
ほんの一瞬だけ誤植を疑ったものの、アルゴの攻略本に限ってそれはないだろう(とはいえ、『大丈夫。アルゴの攻略本だよ』という売り文句を目にした時だけは、何故か無性に不安を感じてしまうのだけれど)。
「部屋の位置は合ってるみたいだし……バグか何かかな。まあ、倒すしかないよね……!」
「りょうかーい!」
ともあれ、このまま棒立ちしているわけに
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