挿話
とあるβテスター、人形遣いと出会う
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ことはあまりない―――のだろう、きっと。
まあ、元々プレイヤーの首を狙ってくる凶暴なモンスターなのだし、使い魔となった今でも気性が荒いところは変わらないのかもしれない。
「いやしかし、ああも他の者に懐いているぺんぺん丸を見ると、私としては些か嫉妬してしまうよ。なにせ普段の彼女は友人である私の寝首をも掻こうとするほどに気性が荒いのだからね」
「懐いてないじゃねぇか」
むしろ殺す気満々じゃないか。
この人、本当にあの人形の主人なのか……?
「いやいやそんなことはないよ。付き合いこそそう長くはないが、私とぺんぺん丸は固い友情で結ばれているのだから」
「……そうなんですか? とてもそんな風には思えませんけど」
「失敬な。私以外の誰がぺんぺん丸の愛情表現を受け止めてやれるというのだね?寝首を掻こうとするのは種の本能なのだから仕方がないのであって、私が嫌われているという根拠にはならないよ」
「……。まあ、そうなんでしょうね……たぶん」
確かに首狩り人形っていうくらいだしなぁ。
ひょっとしてシェイリに懐いているのは、彼女が攻略組の間で《首狩り》などと呼ばれていることを本能で察したためだったりするんだろうか。同族意識みたいな感じで。
だとしても、愛情表現で寝首を掻かれそうになるのは僕は絶対嫌だけど……。
「おっと。シェイリちゃん、すまないがぺんぺん丸の食事の時間だ。彼女をこちらに渡してくれたまえ」
「はーい」
最後にもう一度だけ頭を撫でてから、シェイリは抱きかかえていたぺんぺん丸をナナミヤさんに手渡した。
こうしてみると、人間の赤ちゃんを扱っているように見えなくもない。
まあ、血のこびりついたシックルを持った赤ちゃんなんてものがいたら怖くて仕方ないけれど。
「ほうらぺんぺん丸、食事の時間だよ」
「………」
子供をあやすように笑いかけるナナミヤさんを眺めながら、僕はふと疑問に思った。
いくら使い魔には定期的に餌を与える必要があるといっても、ぺんぺん丸の種族《ボーパルパペット》は西洋の女の子の姿を模した人形だ。
《竜使い》の少女のような動物型モンスターならともかく、人形がどうやって食事をするというのだろう。
一応、ぺんぺん丸の顔には小さな口が付いているけれど、それはあくまでも人形の口であって、とても食事を行えるようには見えない―――って、
「……あの、ナナミヤさん。それは一体」
「彼女の主食だが?」
思わず聞かずにはいられなかった僕の視線の先には、ナナミヤさんの白魚のような指先―――に摘ままれている、何かの肉塊。
おそらくモンスターのものであろうそれは、加熱加工すらされていない生肉のようで、不気味なまでに赤黒い。
「………」
「? どうしかしたのかね、ゆのゆの?」
「い、いえ……なんでもないです
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