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バード
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第二章

「今からです」
「おい、相手は剣も魔法も通じないんだぞ」
「そんな相手にか?」
「何をするってんだよ」
「まず申し上げておくことがあります」
 ラディゲはだ。その飄々とした口調をそのままにして彼等に話す。
「倒せない化け物はいません」
 まずはこのことを言うのであった。
「決してです」
「決してですか」
「それは」
「はい、決してです」
 このことをはっきりと言うのであった。
「それはありません」
「ではここは」
「どうするってんだよ」
「それは行ってわかることです。それでその化け物ですが」
 今度は化け物について尋ねた。その暴れ回っている相手のことをだ。
「どういった相手なのでしょうか」
「何かスライムみたいな奴らしいな」
「やたらでかくてそれで身体は緑色に光っててな」
「目が一杯あるらしいな」
「ちょっとした音にも反応するしな」
 彼等はこう口々にラディゲに話す。ラディゲはここでだ。音という言葉に目を微かに動かさせた。そうしてそのうえで話をさらに聞くのだった。
「火も氷も雷も効かないってな」
「当然斬っても打ってもな」
「駄目なんだよ」
「成程、それではです」
 ここまで聞いてであった。ラディゲは落ち着いた声で述べた。
「では。私は間違いなくその化け物を退治できます」
「んっ、その化け物知ってるのか」
「まさか」
「いえ、知りません」
 それについてはというのだ。
「ですが。退治はできます」
「退治したらかなりの額の報酬が出るぜ」
「酒も随分とな」
「ほう、酒ですか」
 酒と聞いてであった。ラディゲの目が期待するものになった。
「それは何よりです」
「それでは今から」
「行かれますね」
「はい、それでは」
 こうしてであった。ラディゲは意気揚々とその村に向かった。村は小さいものでありかなり荒れ果ててしまっていた。田畑もあちこちが乱れ開墾もされなくなっており家々も朽ち果てようとさえしていた。小屋も倒れて朽ちてしまったものばかりであった。
 そんな荒れ果てた村からだ。疲れきった顔の老人が出て来て言うのであった。
「冒険者の方ですか」
「そんなところです」
 ラディゲはにこやかに笑って答えた。
「バードです」
「あの、化け物を退治されに来られたのですね」
「はい」
 老人の言葉に落ち着いた声で答える。
「その通りです」
「もう御存知だと思いますが」
「剣も魔法も通じないのですね」
「そうです。何も通じません」
 老人は弱った声で答える。
「ですから。誰が来られても」
「安心して下さい。倒せない存在はいません」
 ここではあえて化け物とは言わないのだった。存在というのであった。
「ですから」
「ではどうされるんですか?」

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