4/24 ヒーローみたい
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
言いながら煙草を携帯用灰皿に押し付けて素直に凭れかかり、肩に顎を乗せて遠慮がちに背中に腕を回して抱き着いてくる。そんな動作が堪らなく愛しくて、俺より大きな身体を強く抱き締める。
この人は高い矜持が邪魔をしてなかなか素直になれないだけで、本当は結構甘えるのも甘やかすのも嫌いじゃない。
こうして機会さえ作ってやれば、ぎこちない仕草で甘えてくる。俺だけが知っている、この人の顔。
「本当はすぐに保健室行かねェとだけど……」
「……先生いるだろ」
「だから、もう少しこのままでいやしょうか」
「ん」
首を捩って見てみれば黒髪から覗く耳がほんのりと赤い。
「土方さん、ちゅーして下せェ」
「……」
いつもなら断られるだろうお願いに、土方さんは気まずそうに顔を上げて――そっと触れるだけのキスをくれた。
それが精一杯だったらしく、触れたのはほんの一瞬。それでも俺の心は充分過ぎるほどに満たされていく。
「何驚いてんだ」
「いや、断られると思ってたんで」
「……今日は特別だ」
そう言って土方さんは悪戯っぽい笑みを浮かべた。
――こんな顔を見れるなら、たまにはアンタだけのヒーローになってやらなくもない。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ