悪魔-メフィスト-
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うして自分はこんな場所に立ち尽くしている?
そして蘇るのは、あの残酷な悪夢。ワルドによって親友と愛する人が惨殺される夢。何千人にも増えた愛する人の幻影が自分を怒りと憎悪の目で見る夢。自分の手によって殺されてしまったルイズやサイト、そして母に枢機卿…。
「あ、ああ…あああああ…!!」
アンリエッタはその場で膝を着いて頭を抱え、悲鳴を漏らしだす。その身はフブキに当てられたかのごとく震えあがり、その顔はひどく青ざめ恐怖で歪んでいる。
「私は…ダメな王女…何もできない…なにも…成せない…」
愛する人も助けることができない。それ以前に王族と言うしがらみのせいで、幼い頃から何から何まで管理され決まりきったレールの上を走らされる毎日。
女王の役目を担わされた望まない日常、ゲルマニア皇帝アブレビト3世とは婚約解消したが…いずれ訪れるだろう望まない結婚、望んだものすべてが自分の手から離れて行く喪失感。アンリエッタは、もう現実から目を背けずにはいられなくなり、ただひたすら恐怖におびえていく。
『ギギギギギ…』
そんな彼女の傍に、黒い影が忍び寄る。確かに影だけの存在のはずなのに、動く度にぐちゃぐちゃと音をたてている。まるで相手のすべてを貪り食うような不快な音だ。しかあしアンリエッタは全く気づきもしない。今の自分の心を支配する恐怖におびえているだけだった。
「私は…ダメ…もう…何も無い……生きていけない………」
ぶるぶる震えながら、彼女はその場から一歩も動かない。背後から迫ってきている影は、アンリエッタの体に、まるで虫のように這い上がってきて、彼女を黒く染め上げようとする。それでもアンリエッタはまったく気づきもしない。いや、気づいても今の彼女は、寧ろこのまま闇に飲み込まれることを逆によしとするのかもしれない。
―――――闇に囚われるな!
その声が耳に入った時、アンリエッタは顔を上げた。その目はまるで、死人のようだった。しかし彼女は見た。目の前に、金色の光を放つ光の巨人が立っているのを。その巨人は両腕を頭上に上げると、自身の体に纏われている光を周囲に解き放ち、その闇の空間を光に満ちた空間〈メタ・フィールド〉に変えていく。
――――光を失うな…!
巨人…ネクサス・ジュネッスブラッドの声がアンリエッタの頭の中に響く。
「…光…?」
力の無い魂が抜けたような声を漏らすアンリエッタ。しかし、自然とネクサスの放つ光に、すがるように手を伸ばしていく。光がアンリエッタに迫っていくと同時に、彼女を飲み込もうとする黒い影は、逃げるように彼女の体から離れていった。
もう少しで、アンリエッタにネクサスの光が届こうとした時だった。
――――位相の干渉もそこまでだ
地震の様な衝撃が走り、その瞬間ダーク
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