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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第二七話 幻想を真実に
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弁のメインは京坂と博多弁だ、大して変わらん―――まぁ海に面していたからその影響だろうな。
“ぜよ”は下級武家が恰好を付けるときに使う言葉だ、要するに
傾奇者
(
かぶきもの
)
の言葉さ。」
「……確かに忠亮さんは傾奇者って感じじゃ無いですね。」
「だろ?」
肩を竦めて苦笑いを零す。ああいう前口上が似合う人間は他に居る、自身の色で場を染め上げる素質の持ち主――――覇道を歩むもの覇者。
自分はそう云う類の人間ではない、あくまで自身の在り様だけに拘る求道者。その本質は変えようがない。
「其れとも歌舞いている方が良かったか?」
「いえ、忠亮さんは忠亮さんのままがいいです。」
微笑みが咲く。
まるで春のうららかな日差しのような、春の薄空にうっすら浮かぶ月のような。
静かに、穏やかに、和やかに
手を伸ばせば触れれる、でも触れてはいけないような気分になる。
そう、硝子の彫像に素手で触れるとその手の指紋で汚れてしまうが為に触れれない。それによく似た感傷だ。
「
己
(
おれ
)
も、お前のままのお前がいい。」
「ふふっ、ありがとうございます。」
その笑みにまた絆される。
ああ、やはり自分は守る側がいい。―――惚れた女が自分を押し殺しているところなんぞ見たいとは思えないし、彼女の微笑みを見るたびに自分の存在意義を実感できる。
「唯依・・・・・」
「はい。」
徐に立ち上がるとその傍らに立つ彼女の名を呼ぶ。
「ほんまに、お前のことを愛しちゅう」
「……うちも、あんさんを愛してはります。」
方言で告げる言葉、恥ずかしいのか俯きながら震える彼女を左腕で抱きしめる。すると唯依もゆっくりと胸の中で噛みしめるように慣れない京言葉で口にする。
―――唯依が初めて言ってくれた愛しているという言葉だった。
「くくく―――なんだ、この珍妙な違和感っ!!」
「ひ、ひどいっ!?」
喉を鳴らしながら不敵に茶化す。悲鳴を上げる唯依だがその頭部を胸に押し付けたまま話さない―――今のにやけ顔は正直見せられたものではない。
そんな時だった―――唐突、突然、突如として部屋の扉が開かれた。
「忠亮いるか……い!?」
開け離れた扉と共に言いかけて珍しく固まる青を纏う神出鬼没な珍客―――義兄、斑鳩崇継がそこにいた。
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