番外36話『仲間の力』
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……どうやら俺の旅はここまでらしい。
何も理解できていないはずなのに、それだけは理解してしまった。
逃げることは不可能。
別にロビンみたいに目の前の相手にトラウマを覚えたわけじゃない。俺はなんだかんだで空手家で、だからこそもう把握してる。俺の目の前に立つ人間は、世界の最強クラスという壁の向こうにいる人間で、今の俺の一つ向こうにいる存在だと。
だから、悩むことすらなかった。
理由を聞くことすら考えつかない。
「ルフィたちがこの島を出る間だけ……いや、一日でいい。一日でいいから時間が欲しい。絶対に逃げないから」
そう言って、また土下座をしていた。まったくもって、俺の頭は軽いようだ。最近青キジにも下げたばかりなのに。当然だけど頭が軽いといっても頭が悪いとかそういう意味ではない。いや、そういう意味でも俺の場合は間違ってはないけど。
俺は海賊で、その場で連れ去られても文句は言えない。なんといっても世間でいう無法者。俺の言葉に信憑性なんかあるわけがない。しかも相手は海軍の人間で、俺とは完全に敵対関係の位置にいる人間なんだから。
けれど、本当にありがたいことにルフィのじいちゃんは俺を信じてくれた。
「ええじゃろう、時間をやる。どうするか考えるんじゃな」
そのまま去っていくその背中に、俺は頭をあげることが出来なかった。
逃げたい。けど、もちろん逃げない。一度時間をもらうという約束をして逃げるとか……約束を破るのは絶対嫌だ。そんな仁義もへったくれもないようなこと、師匠にもルフィたちやナミにも合わせる顔がない。
みんなに相談して一緒にガープのじいちゃんを倒してしまえばいい。ふとそういう考えが浮かんだ。どうするか考えろと言ってくれたんだ、ルフィのじいちゃんだってみんなでルフィのじいちゃんへ挑む可能性だって視野に入れてるはずだ。
これを考えて、すぐに無理だと自分の頭を振る。
はっきり言ってルフィたちが味方してくれた程度で勝てる相手じゃない。全員で挑んだ場合、全員一緒に捕まるっていう未来しかありえない。
だから、もう俺には諦めるという選択肢しか残っていない。
ルフィになんて言おうか、ナミになんて言おうか……色々と考えるうちに夜が明けていた。
「ハントはまだ眠ってんのか? せっかくサニー号が完成したのになー」
ルフィの声だ。
この声で、うっすらと沈んでいた意識が覚醒した。どうやら軽く眠っていたようだ。
「あ」
俺が目覚めたことにナミが気付き、声を漏らす。その声でルフィもまた俺が目覚めたこと気づいた。ナミが叱るような表情を作り、口を開いたのと同時。ルフィが素晴らしい笑顔で口を開く。
ナミからは怒られそうだ。心配をやっぱりかけちゃったんだな、ごめんなナミ。
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