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ある少女の話
ある少女の話
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一週間が経とうとする頃にそれはさらに強くなった。
 やはりおかしいのだ。何もかもが満ち足りてしまっている。それはあまりにも満ち足りていてそれが自然にすら思える程であった。その自然さに疑問を覚えたのだ。
「この屋敷には何かがある」
 僕はそう確信していた。だがそれが何かまではわからなかった。
 屋敷で姿を見るのは少女だけである。それも僕が望む時に姿を現わす。いると思ったらそこにいるのだ。これについて不思議に思わない方がどうかしていた。
 ある夕食の席で僕は同席している彼女に問うた。
「あの」
「はい」
 彼女はフォークとナイフを止めて僕に答えてきた。僕は思い切って言うことにした。
「そろそろ帰らせて頂きたいのですが」
「どうしてですか?」
 それを聞いた彼女の顔が急に悲しげなものになった。
「何かこの屋敷にご不満でも」
「いえ」
 それはなかった。正直にそう答えた。
「そろそろ家に帰らなくては。家族も心配しているでしょうし」
「それなら御心配なく」
 彼女はそう答えた。
「ご家族も貴方様のことはご承知です」
「そうなのですか」
 何時の間に連絡していたのであろうか。いや、そもそも彼女に実家のことなぞ全く言っていないのだが。
「ですから何もお気遣いなく」
「しかし」
 それでも言わざるを得なかった。
「それでも家族が心配しておりますし」
「どうしてもですか?」
 彼女の黒い琥珀の様な目に涙が浮かんできた。
「帰られるのですか?」
「それは・・・・・・」
 泣かれるとは思っていなかった。僕は怯んだ。
「あと少しだけでも」
 ここでこう言われた。
「ここに留まって頂きたいのですが」
「いいのですか?」
 かえって僕の方が謙遜してしまった。
「はい」
 彼女は答えた。
「貴方様がお好きなだけ。是非留まって下さい」
「わかりました」
 これで話はふりだしに戻った。こうして僕はまた数日この屋敷に留まることになった。それは数日どころかまた一週間経った。それでもまだ続いていた。
 本当に慣れてきた。もうここでのことに何の不満もなかった。しかし疑念は別であった。
 やはりこの洋館は何かがおかしいのだ。邪な空気はない。むしろ落ち着く。だが、そこに僕は一種の異様さを感じずにはいられなかったのだ。
 彼女以外にいない家の者、そして無機質な中。時として見えるものが幻想ではないかと感じる程であった。
 僕は屋敷の中を歩くことは少なかった。ただ彼女に案内されるか、決まった道を進むだけであった。外に出るにしてもやはり彼女と一緒である。殆どいつも彼女が側にいるのだ。
 完全に心を許していた。信頼もしていた。だがそれでも彼
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