ある少女の話
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彼女は語りはじめた。
「この家は貴方の予想通りです」
僕はそれを聞いてやはり、と思った。
「私以外には誰もおりません」
「では誰が家事等をしているのですか?」
僕は問うた。
「私自身が」
彼女は答えた。
「私が願えば全ては出て来ますから」
「それでは貴女は」
「はい」
彼女は答えた。
「この屋敷は私そのものです。私とこの屋敷は同じなのです」
「そうだったのですか」
僕はそれを当然のことだと受け止めていた。驚きはしなかった。
「それでは」
僕はまた問うた。
「この洋館は一体何なのでしょうか」
「はい」
彼女はそれに答えた。
「この洋館は明治の初期に建てられたものです」
古い洋館だ。その予想は当たっていた。
「そして私はこの洋館の心なのです」
「古いものに魂が宿った、ということですね」
「ええ」
そう答えて頷いた。
「つまり洋館は私の身体、私は洋館の心なのです」
「貴女ご自身が洋館なのですからそうでしょう」
僕はそれを聞いてそう答えた。
「これで今までのことがわかりました」
彼女は答えなかった。
「何故今まで僕の思う通りになっていたのか」
「それは私が貴方の心を読んでいたからです」
「そう」
僕はそれを受けて頷いた。
「そのうえで貴女は動かれていた」
「はい」
「全ては貴女の手の中にあったのだ」
「それは違います」
しかし彼女はそれを否定した。
「私はただ貴方の望まれるようにしただけです」
「確かに」
それはよくわかっていた。
「だがそれには貴女の別の心があった」
「否定はしません」
彼女はそれを認めた。
「貴方にずっとここにいて欲しかったのですから」
「それは何故ですか」
僕は問うた。
「何故僕にここに留まっていて欲しかったのですか?」
「それは」
彼女は口篭もった。
「さあ、どうぞ」
だが僕はそんな彼女に答えてくれるよう促した。
「お答え下さい」
やはり人ならぬ者である。警戒はしていた。僕は顔を引き締めて問うた。
「寂しかったからです」
彼女は答えた。
「寂しかった」
「はい。私は長い間ここに一人でした」
「どれだけですか」
「生まれてすぐです」
そう言った。
「私は百年以上も前にここに建てられました」
「明治の頃でしょうか」
「ええ。さる華族の方がこちらの別荘にと。しかし」
「何らかの事情でいなくなってしまったのですね」
「そうです。それが何なのかはよく知りませんが」
悲しい声でそう言った。
「それから私はずっと一人でした」
「今
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