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ルドガーinD×D (改)
五十三話:教師に呼び出されると緊張するよな
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かと思ったことも一度や二度ではない。だが、彼には残酷なことに希望があった。エルという一人娘が、本物になるという野望が。だから死ねなかった。だが―――今の彼にはエルすらいない。野望だけが彼を生かしている。


「もう一度……みんなと一緒に生きるんだ。今度こそ―――何も失わない」


過去を取り戻し、今度こそは何も失わないと決意を新たにしたヴィクトルは家の中に戻っていく。彼は明日を夢見る幸福論者でもなければ、明日の死を待つ自殺志願者でもない。ただ、在りし日の思い出に縋ることしか出来ない廃人だ。


「もう一度、君をこの手で抱きしめる……それが俺の願いだ。だから、もう少し待っていてくれ―――ラル」


彼にとってラルのいない世界は全て偽物だ。彼女の隣で笑う自分と娘が居る世界こそが本物の世界だと信じて疑わない。彼を止めることが出来る人間がいるとすればそれは彼女だけであろう。だが、彼女はどこにもいない。故に彼は止まることを知らない。自分がどれだけ愚かな行動をしているかを、自分自身が妻への愛を、娘への愛を、妻が自分を愛してくれたという事実を否定しようとしていることを彼は気づくことが出来ない。


「君のいない世界なんて……何もかも―――偽物だ」


全てを偽物だと信じて疑わない彼には。


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