つぐない
とある剣士、――する
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でもない限りは。
であるならば、ソードスキルですらない一撃で男のHPを3割も奪ったこの少年は。
男がどう足掻いても辿り着けなかった境地───攻略組クラスのプレイヤーであることに他ならない。
───ざッ、けんじゃ、ねぇぞ……ッ!!
少年が攻略組クラスのプレイヤーであるという仮説が正しいのであれば、不意打ちが見破られたのも至極当然だ。
むしろ男が不意打ちを狙っていることに最初から気が付いていて、その上で泳がされていたということになる。
「ッざけんじゃねぇぞ、テメエェェッ!!」
自分が優勢だと思い込んでいた出鼻を挫かれ、ましてその相手が年端もいかない少年だったことで、男のプライドは大いに傷付けられた。
当然ながら、男の精神はそんな“馬鹿げた話”を許容できるようには出来ていない。
先の一撃は何かの間違いだと主張するように、怒号と共に大剣を振り上げ、黒衣の少年の脳天目掛けて振り下ろした。
「……!!」
だが───しかし。
男の渾身の力を込めた一撃は、少年の持つ細身の剣によって難なく受け止められてしまう。
「テ、テメエ……ッ!!」
「………」
受け止めた剣ごとへし折らんと両腕に力を込めるが、どういうわけか、男の大剣は一向に動く気配がない。
自分の全力の攻撃が、少年が右手で構えた片手剣だけで難なく受け止められている。
無言で男の攻撃を受け止め続ける少年の虚ろな双眸からは、何の感情も感じ取ることができない。
そんな少年の態度が、まるで自分など取るに足らない相手なのだと言われているように思えて、男を更に激昂させていく。
「こ、の……!畜生ォォォ……ッ!!」
「……、はぁッ!!」
「がッ───!?」
男がいくら力を込め続けようと、細身の剣が折れることも、少年が耐え切れずに膝をつくこともない。
それが少年と自分の筋力値の差によるものだと気付いた次の瞬間には、短い気合と共に突き出された少年の左拳が男の土手っ腹へとめり込み、腹部を中心にぞわりとした悪寒が全身を襲った。
体術スキル《閃打》。
片手による単打を繰り出すという至ってシンプルな技だが、両腕に意識を集中させていた男の不意を衝くにはそれだけで十分だった。
素手であるとはいえ初撃とは異なり、今度はれっきとしたシステムアシストによる一撃だ。
その分のダメージ補正もきちんと加算され、男のHPがぐんと減っていく。
「あ、あ……!」
今度こそ───男の慢心は完膚無きまでに打ち砕かれた。
たった二発の攻撃で危険域まで落ち込んだ自分のHP残量を視界に入れながら、男はひゅっと喉を鳴らして後ろへ倒れ込んだ。
「………」
「な、何なんだよ、お前……ッ! く、来るな、来るんじゃねぇッ!!」
尻餅をついて後ずさる男を見下すように、少年は男の顔へ視線を向
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