つぐない
とある剣士、――する
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は飢えた獣の渇きにも似たようなものだった。
その渇きを満たしてくれる相手がわざわざ自分から現れたのであれば、この機を逃す手はないだろう。
───なんだ、ちょうどイイじゃねぇか。
この時間なら他のプレイヤーに目撃されるという危険性もほぼ皆無───というよりも、元よりここには男の仲間達以外は出入りしていない。
例え自分が出て行って、あのプレイヤーを殺したところで。それを目撃する者も、咎める者もいないだろう。
───久々に……楽しめそうだ、なぁ……ッ!
燃えるような喜悦を感じながら、男は手早く《隠蔽》スキルを発動させると、暗闇に紛れるように宿を飛び出した。
攻略組に対抗していた頃の名残りで、男の《隠蔽》スキル熟練度は仲間内でも頭一つ飛び抜けていた。
攻略組クラスのプレイヤーならともかく、こんな低い階層の村をうろついているような者が相手であれば、見破られる可能性はほとんどないだろう。
案の定、真夜中の圏外村を一人うろついていたプレイヤー───上下共に黒ずくめという装いの少年は、こちらに気付いた様子もなく、きょろきょろと辺りを見回している。
未消化のクエストでも進めにきたのか、あるいは他の理由か。そんなことは男には知る由もないが、これといって興味もなかった。
この渇きを今すぐに満たせるのなら、相手の目的が何であろうが構わない。
顔面に薄ら笑いを湛えたまま、男は少年のすぐ背後へと忍び寄った。
───恨むなら自分の不運を恨むんだな、ガキ……!
声に出さずに宣告し、男は少年の心臓を串刺しにするべく、自身の持ちうる最大威力のソードスキルを発動させる構えを取った───
「──ッ!!」
「な、にィ……ッ!?」
───その、刹那。
肩に掛けていた鞘から一瞬で抜剣した少年が、振り向きざまに男の胴を薙ぎ払った。
完全に不意を衝けると油断しきっていた男は、胴体を横一文字に切り裂かれ、うめき声と共に数歩下がって地面に片膝をついた。
「な……、あ?」
切り口から舞い散る真紅のポリゴン片を視界に入れながら、男は信じられない思いで目を見張った。
ソードスキルによる攻撃ではなかったので、システムによるダメージ補正はかかっていなかった───はずだ。
にも関わらず、万全の状態を保っていたはずの自分のHPが、およそ3割も削られたのが確認できた。
一時は躍起になってレベル上げに勤しんでいたこともあって、男の基本ステータス自体は決して低くはない。
それこそ相手が攻略組クラスのプレイヤーでもない限りは、例え殺し合いになったところで、一対一でなら負ける気はしなかった。
だが───先の一撃は、そんな男の自信をいとも容易く打ち砕いた。
一対一でなら負ける気はなかった。それこそ、相手が攻略組クラスのプレイヤー
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