つぐない
とある剣士、――する
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た瞬間、《ユニオン》に通報されるのか。
あるいはこの状況そのものが《ユニオン》による囮捜査で、こうして油断させ、男のような潜在犯を炙り出そうとしているのか。
あまりにも怪しい。
受諾するにはあまりにもリスクが高すぎる。
だというのに。
───こいつ……本気だ……!
どくん。どくん。どくん。
心臓の鼓動が早まるような───得も知れぬ感覚。
それが高揚感なのだと気付くまでに、さして時間はかからなかった。
───さあ、どうした? 殺したいのか、殺したくないのか。選ぶのはお前だぜ、boy?
フードの奥でニヤリと笑ったそのプレイヤーが、今一度、流暢な英語混じりに問いかける。
その言葉を聞き終えた次の瞬間には、男は一も二もなく頷いていた。
あの衝撃的な───ある種の運命すら感じさせる出会いを経て、男の生活は一変した。
そのプレイヤーからの助言を基に最初の殺人を行ったのは、夏が近付いたある日の事だった。
同じように殺人願望を抱いたプレイヤー同士で集まり、来る日も来る日も人を殺す計画を練り続けた。
生憎、その集団のリーダー格となったのは男ではなく、別のプレイヤー───それもSAOには珍しい女性プレイヤーだったが、そんなことは男にとって、もはやどうでもいいことだった。
兎にも角にも。
一刻も早く。
狂おしくなるほどに待ち焦がれながら。
男はその時を───人を殺せる時が来るのを、ただただ待ち続けた。
そしてようやく訪れた、その日。
トラップ多発地帯として知られている第27層の迷宮区を舞台に、かねてからの計画は実行に移された。
手順は至ってシンプルだった。
リーダー格の女が単独でターゲットに近付き、所属するパーティが壊滅寸前なのだという旨を伝え、相手に助けを求める。
ポータルトラップによってパーティメンバーと分断され、命からがら逃げだしてきた哀れな女を装うのだ。
話に信憑性を持たせるために、事前に自分のHPをある程度削っておくのも忘れない。
そうすることでターゲットをトラップが設置されたエリアまで誘導し、ポータルの向こうに飛ばされた仲間を助けてくれと懇願し、相手の同情と油断を誘う。
そのままポータルに飛び込んだが最後、転送先の密室には既に仲間が潜伏しており、ターゲットが姿を現した瞬間に襲い掛かるという手筈になっていた。
出待ちPK。既存のMMORPGではよく使われている手法だ。
また、相手が何らかの異変を感じ取ってポータルに飛び込むのを躊躇した時の為に、仲間内で一組のパーティを用意し、通りすがりの一団を装っておく。
ターゲットにPKを悟られた場合は女が合図を出し、その場で奇襲を仕掛けて始末してしまおうという算段だ。
場合によってはノックバックスキルで強制的にポータルへ乗せ
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