つぐない
とある剣士、――する
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とだった。
「た、たすけ……、たすけて……」
手の空いていた団員を伴って自ら現場に駆け付けたディアベルは、主街区《ラムダ》を出てすぐの地点に、カーソルをオレンジに染めたプレイヤーが這いつくばっている所を発見した。
見たところ20代半ばといったところの男は、自分が監獄送りの対象であるということも忘れているかのように、狼狽しながらディアベルの足に縋り付いた。
害意がないことは一目瞭然だったのだが、ここまで酷く錯乱している理由がわからない。
よくよく見れば男のHPは既に危険域であり、あと一撃でも攻撃を受ければ戦闘不能なってしまうほどだった。
「たすけて、助けてくれ……、どうか……!」
「しっかりしろ。一体何があったんだ?」
うわ言のように繰り返すオレンジプレイヤーの両肩を掴んでしゃがみ込んだディアベルは、男と目線の高さを合わせながら、しかし油断せずに問いかけた。
いくらオレンジプレイヤーといえど、こんな状態でフィールドをうろつきまわるなど正気の沙汰ではない。
加えて、この狼狽えようだ。
一体、この男に何があったというのか───
「こ、ここはダメだ、アイツが……、アイツが来る……!」
「“アイツ”……?」
「こ、ころされる……ッ!は、早くッ、早く俺を守ってくれェッ!」
「待て、とにかく落ち着くんだ!」
何とか落ち着かせようとするディアベルに、オレンジプレイヤーの男は一層恐怖に怯えた声で叫んだ。
「助けてくれ、アイツから───あの《黒の剣士》からッ!!」
───黒の剣士。
この日を境に、犯罪者プレイヤー達の間で恐怖と共に囁かれるようになった、あるプレイヤーの二つ名だった。
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