つぐない
とある剣士、――する
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殺された。
言われて、少年と目を合わせて彼のHPゲージを表示させると。
男との戦闘があったにも関わらず、微動だにしていない緑色のHPバー。その真上に表示されているのは、三日月と黒猫をモチーフにしたギルドエンブレム。
それと全く同じエンブレムを、男は見たことがあった。
数ヶ月前に一度見ただけのエンブレムを、男は忘れていなかった。忘れるはずもなかった。
何故ならそのエンブレムは、男が初めて殺したターゲット───あの仲良しグループと思しき高校生の一団が、揃って身に付けていたものだったのだから。
「お、お前、まさか───」
あの日の記憶が、鮮明な映像として男の脳裏にフラッシュバックした。
定期的に人を殺すようになってからも片時も忘れたことのなかった、初めて殺人行為に及んだ日の記憶。
その記憶の中に登場する、ターゲットの中に一人だけ紛れていた攻略組クラスのプレイヤーは。
あのプレイヤーは今目の前にいる少年のような、盾なしの片手剣士ではなかったか。
あのプレイヤーはこんな風に、黒ずくめの衣装に身を包んでいなかったか───!
「……やっぱり、お前達だったんだな」
「ひ、ひッ!?」
そんな男の様子を肯定と受け取ったのだろう。
黒衣の少年が全身に纏った憎悪が、ひときわ大きなものとなったのを男は感じ取った。
あの日以来すっかり殺人の味を占めた男達は、襲った相手のパーティを必ず皆殺しにすることで、《ユニオン》の警戒網を掻い潜ってきた。
男達に狙われたターゲットは、一人も生きて帰ることはなかった。───ただ一つの例外を除いては。
その例外───転送先に潜んでいた仲間達全員がかりでも取り逃がしてしまったという、攻略組クラスのプレイヤー。
そのプレイヤーこそが、今こうして男に剣を突き付けている黒衣の少年に他ならないのだとしたら。
その目的は───考えるまでもないだろう。
あの時、一人だけ取り逃がした少年が。
自分以外のギルドメンバーを殺された少年が、数ヶ月もの時を経て、こうして男の前に現れたということは。
「ずっと、お前達を捜していた。お前達とあの女に償わせるために、そのためだけに───俺は生きてきた」
つまりは、復讐。
まったくもって正当な───復讐だった。
声にならない悲鳴を上げた男の喉元に改めて剣を突き付け、黒衣の少年は憎悪を滲ませた声で問うた。
「答えろよ。あの女は……、お前達のリーダーだったあの赤髪の槍使いは、どこだ───ッ!!」
それから数分後。
男の意識は途切れた。
────────────
第17層主街区の前にオレンジがいる。
そんな中層プレイヤーからの通報が《ユニオン》の代表者たる騎士ディアベルのもとに届いたのは、トネリコの月も残すところ僅かとなった、ある日のこ
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