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Fate/magic girl−錬鉄の弓兵と魔法少女−
A's編
第九十七話 新たな魔術師の産声
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かが頷く。

「了解した。
 すずかは部屋の隅で待っててもらえるか」
「うん、わかった。
 アリサちゃん、頑張ってね」

 すずかが魔方陣から退く様に部屋にすみに移動する。

「アリサ、自分をしっかり持てよ」
「うん、大丈夫」
「なら始めよう」

 士郎の雰囲気が変わる。
 敵意などではなく緊張した空気にわずかにアリサが息を呑む。

「座ってケースの中のものを呑み込んでくれ」
「わかった」

 アリサは士郎の言葉に従い、その場で腰をおろしケースを開ける。
 そこには丸いルビーがあった。

 魔術回路を開くための鍵として士郎の魔力が込められたルビー。
 それをわずかに震える指で掴み、アリサは呑み込んだ。

 だが何も変化は無い。
 困惑するアリサを横に士郎は白い布を丸めたものを取り出す。

「口を空けてくれ」

 アリサは困惑しながらも士郎の指示に従う。
 そして、士郎は取り出した布をアリサの口に咥えさせた。
 意味もわからず問いかけようとした時、アリサの身体の中で大きく何かが鼓動した。

 その鼓動はさらに大きくなり、次の瞬間、激痛となりアリサを襲った。

 声にならない悲鳴を上げ、引き攣ったように手を握り締めようとする。
 だがソレを阻むように士郎が自身の左手を右手に絡めるように握り、崩れ落ちようとするアリサを抱きしめる。

 激痛にアリサは力加減も出来ず右手の爪を士郎の手に突き立て、左手も抱きついた士郎の背中に突き立てる。

 それでも士郎は表情を変えることなく、抱きしめ続け耳元で優しく声をかけ続ける。

 そして、すずかはあまりの光景に呼吸を荒くし、立っている足は震え、ずるずると壁に背中を預けるように座り込む。

 激痛があるのは士郎の事前の説明で聞いていた。
 理解していた。
 否、理解しているつもりであった。

 しかし現実は友人の声のならない悲鳴に震えが止まることなく歯がガチガチと音がする。
 だがここから逃げようとは思わなかった。

 そう、恐怖に心が竦んでいるのに、逃げるということは考えることなく、士郎と共にあることは揺らぐことが無かったのだ。



 そして、三時間近くが経った頃、ようやくアリサの身体が落ち着いてきた。

 未だ身体は痛み、思考も纏らないが、体の引き攣りは収まり始め、突き立てていた手からはゆっくりと力が抜けていた。

 士郎はゆっくりと抱きしめていた腕を緩め、アリサの口に咥えさせていた布を優しく取り出す。

「…………おわった……の」
「ああ、ちゃんと安定している」

 アリサを見つめ、頭を優しく撫でる。
 士郎のその言葉に安堵すると同時に自分の状況を思い出したのか

「見るな……」


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