第5話「悲しい時ほどよく笑う」
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顔を――
「うへへ」
“ズバッ”
笑って、殺す。
黒く染まった空の下で少年は倒れた。
そして少女は――?
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* * *
『みんなの笑顔を護るために私は戦う』
それが少女の戦う理由だった。
人々の『笑顔』が好きで、それを奪っていく天人たちがどうしても許せなくて、護るために刀をとり、戦場に立ったのだ。
だが……護ると決めた仲間達の笑顔は、今はどこにも見当たらない。
気がつけば、雨音しかしなくなっていた。
何が起きたのか分からず、真っ白な頭で周りを眺めた。
声にならない悲鳴が上がった
斬り殺された天人と護るはずだった仲間たちの屍に囲まれていた。
そしていつも笑みが絶えなかった岩田の顔は、無残に斬り裂かれていた。
「……あ…あぁ……」
それを目にした途端、一気に蘇る。
殺戮の快楽と狂気に溺れた自分が。
仲間達の命の灯を自らの手で消した記憶が。
彼の笑顔を潰した瞬間が。
「……あ…あ……」
双葉は呆然と周囲を眺める。
護りたかったモノを探すかのように。
だが、見えるのは天人と仲間達の残骸。
「……どこに…笑顔がある?……誰が…笑ってる?」
そうして、足元の水面に瞳を向ける。
地面に広がる血だまりに映るのは――
「私しか笑ってない」
血に染まり、狂気に歪みまくった『笑顔』だった。
* * *
曇天の空から冷たい雨が降り注ぎ、冷やかな空気が灰色の荒野を包んでいた。
その中を頭に鉢巻を巻いて、腰に刀を備えた高杉が荒々しい息を立てながら走っていた。
鬼兵隊を率いて他の仲間とは別方向から奇襲を仕掛けるはずだった。
だが、思わぬところで天人の軍団の待ち伏せをくらい、逆に攻撃を食らってしまった。
無論、侍である高杉と鬼兵隊の男たちは臆せず突き進んで立ち向かった。
だが圧倒的な武力の差から、集団で攻めていた侍達はバラバラに散らされてしまった。自分達の戦力を極限に減らされてしまい、撤退を余儀なくされた。
敵の手で討たれるよりは、と自ら腹を斬る者もいた。それが『侍』として立派な最期であり、敵に勝つ唯一の方法でもあった。
しかし生き延びるのも、敵に勝つための術(すべ)。
ここでくたばって奴らに負けるわけにはいかない。どこかにいるはずの恩師を助けるためにも、高杉は生き残らなくてはならない。
だが、自分のせいで敵に倒された仲間たちへの後悔念だけは拭い切れない。悔しさに胸が張り裂けそうになる。
しかし、高杉は生き抜くため雨に打たれながら走る。ただ、このまま身体を濡らせば急激に体温が下がり体力も失われてしまう。どこか雨宿りできるような場所で、傷ついた身体を休め
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