第5話「悲しい時ほどよく笑う」
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理はない。そもそもこの戦闘は早過ぎる戦いだった。
予想していた場所よりも先に天人と遭遇してしまい、戦いに至ってしまったのだ。
勘づかれたのか、ただ運が悪かったのか分からない。どちらにせよ、この戦況は自分たちにとって非常に不利である。
だが別の側から攻めに入った鬼兵隊や、銀時たちがこちらに向かっているはずだ。
彼らが駆けつけるまで、なんとかこの場を持ち堪えなければならない。
何人かの味方に背中を預けながら、岩田はそう考えていた。
だが、戦況は一つの出来事で大きく変わる。
「……クフフ……」
隣から声がする。
「双葉はん?」
「……クフフフフ」
微笑にも似た声が。
「どないしたんでっか?」
聞いても双葉から返事はない。あるとすれば、薄気味悪い微笑のみ。
いつもと違う少女に、岩田を含む仲間全員がゾッとするような感覚に陥った瞬間――それは起こった。
双葉は真後ろにいた仲間の背中を斬り裂いた。
紅く火照る眼で楽しそうに笑いながら。
* * *
舞う。
血飛沫が舞う。
肉を刀で抉るたびに。
流血が飛び散る。
少女の顔に深紅の血が貼りつく。
歪んだ口元から笑みがこぼれ落ちる。
無邪気に殺戮を楽しむ笑みが。
斬る。斬る。斬る。
笑う。笑う。笑う。
流血が銀色になびく髪を紅くする。
鮮やかに染め上げる。
遥かに超越した天人を。
彼らに比べてちっぽけな人間を。
斬る。斬る。斬る。
そこから生まれる感情が少女を包む。
嬉しい楽しい恍惚と快楽が。
新たな狂気と殺戮を生み出す。
* * *
「双葉はん!」
何が起こったのか分からなかった。
目の前に広がる光景を見て、岩田は絶句した。
楽しそうに実に楽しそうに笑いながら、双葉は敵はおろか味方さえ見境なく殺していく。
何度呼んでも何度声をかけても、双葉は止まる事なくそこにいる全ての者を斬り裂いていった。
刃向かう者がいるなら喉をかっ斬り、逃げ出す者がいるなら背中を貫いて、踊り狂った悦楽を戦場で歌い上げる。
異常だと誰もが思った。逃げ出すのが当然だった。
だが岩田は何の躊躇いなく、双葉の前に立ちはだかった。
惚れた女の殺戮を止めるために。
「やめんか双葉ァ!」
次の瞬間。
血まみれの刃が岩田の胸を貫いた。
* * *
また笑う。また殺す。
殺して笑って殺して笑って殺して笑って殺して笑って殺して笑って――
「…や…め…ェ……もう…ええ…」
胸を貫かれても少女を止める
「……双葉…もう…ええ……戦わなくて…ええん…よ……」
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優しく微笑む少年の笑
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