第5話「悲しい時ほどよく笑う」
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肩を落とす。
「……だが必ず礼はする。この戦いが終わったらな」
背中越しに言われた彼女の言葉に、一気に眼を輝かせ岩田は攻撃を再開した。
双葉もまた『笑顔』を護る決意を胸にして、刀を握る力を強め再び戦場を駆け抜けるのであった。
だが少女はまだ知らない。
奥底で眠る『獣』の目覚めが間近であったことを。
* * *
戦場に安息はなく、ただひたすら敵を殺していくしかない。
そうでなければ、自分が殺され全てが終わってしまう。
血の雨が降り注ぐ中を走り、双葉はひたすら刀を振るい敵をなぎ倒していた。
相手の急所に狙いを定め、確実に殺してまた次の敵へ目指す。
向かってくる自分に振り下ろされた剣を躱し、双葉は天人の眼球を突き刺した。途端に相手は怯み、目をおさえてもがき苦しみ始める。
天人が上げる悲痛な声が双葉の耳に染みこんでいく。
……ほんの一瞬だけ、彼女はどうしようもない『悦び』を感じた。
そんな自分を異常に思うも、双葉はトドメの一撃を加える為、胸から腹部にかけて凄まじい勢いで刀を振り下ろした。
肉塊、その次は骨を刀が滑る。
斬り裂く感触が刀から手へ伝わり、『興奮』に似た殺傷感が全身を駆け巡る。
そんな感覚を何度も味わう中で、何かが蠢き始めた。
斬り殺すたびに口元は徐々につり上がり、次第に胸の鼓動の高鳴りが増してゆく。
どこかで鳴る音楽のリズムにノるかのように、少女は身体を弾ませ向かってくる敵を何体も殺し続ける。
だが、敵は前からやってくるとは限らない。
突如後ろから猛烈な殺気が沸き上がり、双葉は勢いよく身体を回転させ刀を振り回した。
背中を狙って奇襲を仕掛けつもりだったようだが、逆に返り討ちにあった天人は双葉の刀で首を大きく斬り裂かれた。
同時に凄まじい勢いで首から噴射された血が、双葉の顔に直撃する。紅い血飛沫は口の中にまで入りこんだ。
だが双葉は吐き捨てることもせず、血を染みこませる。
口に広がる鉄の匂い。
匂いが味へ変わり、舌の上で踊っている。
味わったことのない、何ともいえない絶妙な舌ざわり。
双葉は口の中に侵入した異物を存分に味わった。
そして。
ぽつりと呟いた時、彼女の中で新しい感情が生まれた。
「おいしい」
* * *
応戦して天人たちの数を減らしていく。
だが、いくら倒しても敵は出てくるばかり。逆に自分達の仲間の数は確実に減っていた。
今や味方の人数は最初にいた頃の半分にも満たっていない。
更に最悪な事に徐々に囲まれつつある。このまま一カ所にまとめられたら、ハチの巣にされてしまう。
――こりゃちとキツイかもしれへんな。
珍しく岩田は弱音にも似たことを内心で呟いた。いや、彼がそう思うのも無
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