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戦国異伝
第二百五話 支城攻略その五

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「そう言われた」
「確か忍城は」
「あの城は」
「佐吉達が向かったな」
 石田が、というのだ。
「そして桂松が」
「はい、お二人を中心として」
「あの城にもです」
「兵が向けられています」
「しかと」
「そうじゃったな、しかしじゃ」
 それでもというのだ。
「あの城はな」
「攻めてもですか」
「落ちぬと」
「殿は仰っていますか」
「その様に」
「そしてそのことはな」
 その忍城 のことはというのだ。
「猿が伝えた」
「佐吉殿達にですな」
「その様に」
「しかし佐吉じゃ」
 石田だからだというのだ。
「こうした時はな」913
「はい、佐吉殿は引きませぬ」
「あくまでご自身のお考えを言われます」
「そして貫こうとされます」
「何としても」
「頭は切れる」
 このことは荒木も認める、石田の頭のよさは。
 だがそれでもだとだ、彼は同時にこう言った。
「しかしな。空気がのう」
「読めませぬな」
「あの御仁は」
「何時でも何処でも誰でもじゃ」
 まさにというのだ。
「ずけずけと言う」
「殿に対してもそうですな」
「遠慮することなく」
「媚は知らぬことはよい」
 石田の長所である、彼は誰に対しても媚びることなく正面から向かいそのうえで言うべきと思ったことは言うのだ。
「一本気であることもな」
「そのこともですな」
「実に」
「よい美点は多い」
 だが、だった。それでもなのだ。
「しかし。とかく空気を読まず正しいと思ったことはあくまで言うししようとする」
「では」
「まさかと思いますが」
「殿にも直接言った」
「そこが佐吉殿らしいですな」
「あえて言われましたか」
「うむ、忍城を攻めるとな」
 そう言ったというのだ、信長に対して。
「あくまで言ってじゃ。我等も止めたが」
「それで止まる佐吉殿ではなく」
「それで」
「殿も認められた」
 忍城攻め、それをというのだ。
「降れと言って。それでも降らぬのなら」
「その時は、ですか」
「攻めると」
「そう殿に言って引かず」
「決まったのですな」
「若ししくじればな」
 城攻めにである。
「その時はな」
「佐吉殿のことですから」
 小西は石田の性格を考えて言った、城攻めに失敗した場合石田がどうするかを。
「腹を切ると」
「うむ、はっきりと言った」
 実際に、というのだ。
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