第二百五話 支城攻略その四
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「それがしはここに」
「荒木殿」
「はい、それこの韮山城はですか」
「我等が引き受けます」
「左様ですか、しかし」
「この韮山城はですな」
「名将と誉れ高き北条氏規が」
その彼が、というのだ、
「守っているので」
「そうそう容易にはですな」
「攻め落とせぬが故に」
「信長公にも言われたのですな」
「はい」
攻めずに守れ、というのだ。
「そうせよと」
「ではこうして城を囲んで、ですな」
「城から兵を出させず」
そして、というのだ。
「徳川殿の軍勢を待てと言われました」
「そうでありますな」
「では酒井殿は」
「それがしもです」
酒井は微笑んで荒木に答えた。
「ここはです」
「攻めずに」
「はい、城を囲むままで」
「そのままで」
「それがしは先陣でして。後から」
「軍勢がさらに来ますか」
「殿が来られます」
家康自身がというのだ。
「それがしは殿の前に脚の速い者達を連れて先に来ました」
「そして城を囲まれて、ですな」
「後は殿が采配を執られます」
「そういえば」
家康が来ると聞いてだった、荒木は考える顔になりこう酒井に言った。
「家康殿と北条氏規は」
「はい、ご幼少の頃です」
「共に今川家におられましたな」
「人質として」
「そうでありましたな」
「ですからあの方のことはです」
氏規のことはというのだ。
「よくご存知です」
「だからですか」
「ここは是非ご自身がと言われまして」
「徳川殿ご自身がですか」
「この城に来られます」
こう言うのだった。
「それからです」
「わかりました、ではここは徳川殿にお任せします」
「それでは」
こうしてだった、荒木達は徳川の軍勢に韮山城を任せてだった。そのうえで他の城に向かうのだった。そして。
荒木達はその城を囲みすぐに言葉を尽くして城の将兵達を降してその城を手に入れた。荒木はそのうえで高山と小西にこう言った。
「そういえば殿は仰っていた」
「韮山城のことを」
「北条氏規のことを」
「あの城は攻めてはならぬ、そしてじゃ」
「そして?」
「そしてとは」
「忍城もじゃ」
この城もというのだ。
「攻めてはならぬとな」
「言われていたのですか」
「十二郎殿は」
「うむ、権六殿達と共にな」
つまり織田家の中でも主だった重臣達が信長に言われたというのだ。
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