第四十四話 薊達の決意その十三
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「そうだったの」
「そう、ただね」
「ただ?」
「何処におられるかはわかっていないわ」
まだ日本にいても、というのだ。
「残念ながらね」
「わかっていないの」
「秘密にされていてマスコミの取材も受けていないから」
「学者さんからも」
「そう、研究をしてもね」
現在の山窩の文化等の研究は出来る、しかしというのだ。
「それでもね」
「何処におられるかは」
「言ってはいけないとされているの」
「奈良にいても」
「そう、言ってはいけないから」
「そういうことってあるのね」
裕香は黒蘭の話を聞いてしみじみとしてだった、六甲の方を見た。
そしてだ、こんなことを言ったのだった。
「山って不思議ね」
「まだ日本にそうした人がいるかも知れない場所だから」
「ええ、誰がいるかわからない場所なのね」
その六甲の方を見てまた言ったのだった。
「街と違って」
「ああ、ひょっとしたら六甲にもだよな」
薊も裕香に応えて言った。
「いるかも知れないんだな」
「山窩の人のことは高校に入ってここの博物館や先生に詳しく教えてもらったけれど」
裕香は薊にも話した。
「あの人達は普通に山の中で自分達の道を知ってて」
「そこを歩いて生活してたんだな」
「それで山の中のものを獲って食べていたのよ」
「獣とか木の実とか山菜とかか」
「川魚もね」
「それで家もか」
「勿論山の中よ」
当然平地にある様な民家ではない。
「その中で暮らしていてお風呂も」
「水浴びとかか」
「特別な温め方をしたお風呂とかに入っているらしいわ」
「何か日本であって日本でないみたいな」
「言葉も違ったらしいから」
喋るそれもというのだ。
「縄文時代の言葉らしいわ」
「凄いな、それはまた」
「他にも色々と平地に住んでいた人とは違っているの」
「山には山の世界があるんだな」
「そうなるわね」
「海もそうだけれどな」
山も、とだ。薊はここでわかったのだった。
「何か日本っていっても一つじゃないな」
「そうよね」
「あたし達もな」
ここでだ、薊は自分達のことを言った。
「こうして普通に暮らしているけれど」
「それでもなの」
「他の人と違うところあるからな」
力のことを言うのだった。
「その辺り知りたいから今博士のところに向かってるしな」
「そうなるわね」
「ああ、ただな」
「ただ?」
「夏の学校って静かだからな」
こんなことをだ、薊は不意に言ったのだった。
そしてだ、薊だけでなく裕香以外の全員がだった。立ち止まった。薊はそうしてからあらためて周りを見回した。
それからだ、こう言ったのだった。
「誰もいないからか」
「来たのね」
向日葵も応える。
「ここで」
「場所は選ば
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