1部分:第一章
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それぞれ非常に穏やかだ。だが穏やかなのは顔だけだったのだ。
口からは蛇が出て互いに向かい合い攻撃し合い髪の毛が上でその蛇と同じように絡み合い攻撃し合っている。実吉はその光景を見てしまったのだ。
「な、何じゃこれは!?」
思わず声をあげると髪の毛は落ち蛇は口の中に引っ込んでしまった。すぐに何もなかったようになる。そして声に気付いた二人がはたと目を醒ますのだった。
「これは旦那様」
「どうかされたのですか?」
「どうかされたのではない」
実吉は目をこすりつつ身体をゆっくりと起こしてきた二人に対して半ば叫んで言う。
「御主等今どうなっておったかわからんのかっ」
「どうなっていたとは」
「眠っていただけですが」
「違う、違うぞ」
それを必死に否定する。
「髪の毛が絡み合い攻撃し合って蛇が口から出ていてそれもまた」
「御冗談を」
「その様なことが起こる筈がありませぬ」
しかし二人はそれを笑って否定する。まさかといった顔で。
「私達はただ寝ていただけです」
「それでどうして」
「何も知らんのか」
二人のその様子を見てこのことを悟った。
「まことに」
「はい、私は嘘を申してはいません」
「私もです」
おしまもおかよも言うのだった。真顔だった。
「ただすやすやと眠っていました」
「それだけです」
「ううむ、全く知らぬのか」
このことをあらためて思うのだった。当人達の言葉から。
「これは一体。面妖な」
「それで旦那様」
「何用でしょうか」
「うむ、実はな」
とりあえず用事のことを伝えた。二人はそれを聞くとすぐにその用事に取り掛かった。起き上がった二人は相変わらず仲良く普段と変わりがない。実吉は先程の髪と蛇のことを思いながらその二人を見ていぶかしんで首を横に振るのだった。
だが彼はそれで終わらせなかった。次の日に彼は知り合いの僧のところに向かった。彼が檀家にしており江戸でも有名な立派な僧だ。彼にこのことを話してどういうわけか知りたかったのだ。
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