つぐない
とある鍛冶師、盗み聞く
[8/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
それらの言葉から連想される答えは、即ち───
「……まさか、誰か殺られたってのか?」
自分で口にしておきながら、その意味するところが信じられずに、リリアは驚愕の思いで部屋を振り返った。
閉じた扉の向こうからは、相変わらず、ユノの押し殺したような嗚咽が聞こえてくる。
ベータテストの頃ならいざ知らず、今のSAOでは殺人は御法度だ。
ただでさえ《ユニオン》が睨みを利かせている中で、自ら殺人に手を染めるプレイヤーがいるとは考え難い。
だが───
───だが、そう考えると辻褄が合う。もし本当にPKだったとして、殺られたのが身内だったりしようもんなら、あの馬鹿は真っ先に復讐しようとするに違いねぇ。
第1層での件を考えれば明白なのだが、ユノは過剰なまでに他者を優先する傾向がある。
流石に当時ほどではないのだろうが、今でも自分を軽んじる癖は抜けておらず、その度に相方の少女から諌められているほどだ。
そんなユノが、PKによって、誰か親しい者を殺されたのだとしたら。
周りから何と思われようと───例え自分がオレンジに逆戻りすることになるのだとしても、相手への報復を選ぶだろう。
何かと自己犠牲に走りがちなあの投剣使いには、そうさせてしまいかねない危うさがあった。
であれば、とリリアは思い、右手の指を振ってメニューウインドウを開いた。
フレンドリストの項目を選択し、そこに登録されている、数少ないプレイヤー達の位置情報へと目を走らせる。
裏通りに身を潜めていた自分と同じく、最近まで人目を避け続けてきたユノも、他のプレイヤーとの交流はお世辞にも多いとはいえないはずだ。
であれば、その数少ない友人の中の誰かが被害に遭ったと考えるのが順当だろう。
フレンドリストを開いたのは、彼も知る共通の友人───クラインやエギルに被害が及んだのかと考えたためだった。
「………」
だが───違う。
部屋にいるシェイリは当然ながら除くとして、クライン、エギル、アルゴ(彼女とは犬猿の仲だが、不本意ながら情報屋として頼ることも少なくない)、リーランドなど、攻略でよく顔を合わせるプレイヤーの位置情報を一通り調べてみたものの、誰一人としてログアウト状態になってる者はいなかった。
共通の友人ではないとするなら、被害を受けたのは自分も知らないユノの友人か、あるいは狩場で遭遇しただけの赤の他人か。
しかしながら、昨日は既に迷宮区の探索を終えており、あれから二人だけで再び狩りに向かったとは考えにくい。
仮にPK現場に居合わせてしまったのだとしても、たまたま狩場で出会っただけの相手にここまで心を乱されるとは思えない。
相手を救えなかったと落ち込むことはあるかもしれないが、あれほど慟哭するまでには至らないだろう。
そう思えてしまうほどに、彼を
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ