つぐない
とある鍛冶師、盗み聞く
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も遭わない限り、他人事のように思ってしまうのが人の常だ。
あれから半年もの月日が流れた今となっては、直接顔を合わせる機会が多い攻略組プレイヤーの中にすら、ユノが人殺しだということに疑問を抱いている者がいそうなものだった。
だというのに。
他でもないユノ自身が、未だに周囲に引け目を感じている。
自ら悪役《ヒール》を演じたつもりでいて、その実、自分で自分を縛り付けているのだということに気が付いていないのだろう。
ベータテスト当時、ユノが幾人ものプレイヤーを殺害したのは事実だが、リリアに言わせれば、そんなものは「所詮はゲームだ」の一言で片付けられる問題に過ぎない。
そのことを引っ張り出して騒ぎ立てた周りも周りだが、かといって、何でもかんでも背負い込もうとするユノに対しても、彼の苛立ちは募る一方だった。
よく言えば繊細、悪く言えば自意識過剰───といったところか。
自分が悪いのだと一度でも思い込むと、周りの意見に聞く耳を持たないという頑固な所がある。
そのくせ、自分は悪人だと開き直れるほどの図太い神経は持ち合わせていないのだから、傍から見ているこちらとしては、延々と続く自虐行為を見せつけられているようなものだ。
最近では多少マシになってきたとはいえ、一時は街を歩くにもフードで顔を隠し、時には《隠蔽》スキルを発動させてまで人目を避けるという徹底ぶりを見せていた。
いくら《ユニオン》の連中に目を付けられているとはいえ、そこまでする必要があるのかと、疑問に思わないことはなかったほどだ。
自分は日陰者であるとの自覚を持っているリリアですら、そんなユノの振る舞いには、共感を通り越して呆れが湧いてくるというものだった。
「っとに、めんどくせぇヤツ……」
共に時を重ねれば重ねるほど、呆れは苛立ちへと変わり、リリアを歯噛みさせた。
別に不快というわけではない。不快というわけではないのだが───
「……つーか、実はマゾなんじゃねぇのか、アイツ」
もちろんそんなことはないのだろうが、こうも自罰的になってばかりなユノを見ると、ついついそう思いたくなってしまう。
何でもかんでも自分が悪いと思い込み、勝手に一人で追い詰められていく。
見ているこっちの身にもなってみろ、というのが彼の本音だった。
───つっても、今回ばかりは事情が違うみてぇだが……。
盗み聞いた会話の内容から、いつもの悪癖が出たらしいということはわかったのだが、それにしても、あの取り乱しようは只事ではないだろう。
先のユノの様子といい、会話の端々に出てきた“復讐”“人殺し”という言葉といい、どうにも穏やかではない。
「………」
二人が攻略を中止せざるを得ない程の“何か”。
尋常ではないユノの様子。
《投刃》に、人殺し。そして───復讐。
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