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とあるβテスター、奮闘する
つぐない
とある鍛冶師、盗み聞く
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そもそも、この件については前提からして間違っていたのだから。

───つーか、あの馬鹿にそこまでさせた攻略組の連中こそ、俺からすりゃクソッタレの馬鹿野郎どもなんだがな。

かつてのベータテスト時代において仲間を殺し、当時のボス攻略戦で得たラストアタックボーナスを持ち逃げした。
その後、方々のプレイヤーから追われる身となり、追撃してきたプレイヤーを投剣スキルによって殺害し続けた───というのが、ユノが《投刃》と呼ばれるようになった切っ掛けらしい。

街でユノのことを吹れ回っていたプレイヤー───確かリンドといったか。彼の話によれば、《投刃》はボス攻略戦後の隙を狙ってPKを行う為、わざわざ得物を偽ってまで攻略部隊に紛れ込んでいたのだという。
戦闘中においても、ボスの使用スキルがβ時代から変更されていることに気付いていながら、ディアベルにLAボーナスを奪われそうになった為、わざと見殺しにしようとしたのだ───とも。

その事を糾弾された際に本性を現し、最終的には殺意を仄めかして去って行ったのだとリンドは言うが、少し冷静になって考えてみれば、そうさせたのは自分達であるという事に気が付いたはずだ。
ただでさえ当時の攻略組は、元βテスターのことを有益な情報を独り占めにする人でなしと見る傾向があった。
そうした中で、ボスの使用スキルが変更されていることを指摘すれば、自分が元βテスターだということを自白するようなものだ。肩身の狭い思いをすることが分かっていて、自分から名乗りを上げる者はいない。

その事に気が付かずに勇み足を踏んだディアベルが窮地に陥ったのだとすれば、それは他の誰の所為でもなく、まさしく「自己責任」という言葉が当て嵌まるだろう。
そもそも、仕様変更に関しては開発者の領分であり、例えβテストの経験者といえど、一般のプレイヤーに過ぎない彼らがどうこうできる問題ではない。
敵の使用する武器が変わっていたとて、それで元βテスターを責めること自体、お門違いもいいところだ。
にも関わらずにβテスターを糾弾し、あまつさえユノが元オレンジだったという事実と強引に結び付け、人殺しの為に潜入していた殺人鬼として仕立て上げたのは、他でもない、当時の攻略組プレイヤー達なのであった。

「チッ……」
最前線の街を我が物顔で闊歩していた《ユニオン》の一団を思い出し、舌打ち一つ。
図らずしも日陰者として生きてきたリリアにとって、ああいった正義の味方然とした集団は、どうにも反骨精神を煽られる存在だった。

「あんなガキに全責任押し付けて、テメエらの手は何一つ汚れてませんってか。胸糞悪りィ」
手段としては決して褒められたものではないが、元βテスターへ向けられた矛先を逸らしたという点に限っては、リリアはユノの行いを評価している。
あの場で
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