つぐない
とある鍛冶師、盗み聞く
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、ちっとばかし様子を探るだけだ。アイツがこんだけ泣き喚いてるっつーことは、よっぽどの事があったに違いねぇ。ダチを心配するのは人として当たり前の事であって、俺は盗聴が趣味の変態野郎ってワケじゃねぇからな。
年頃の少女達が寝泊りする部屋を盗み聞きするという、現実世界で行えば近隣の住人から通報されること請け合いの行為だが、パーティメンバーの身を案じてのことなので、罪には問われないだろう。……と、自分に対して言い聞かせる。
もっとも、傍から見ればどう考えても不審人物そのものであり、更には《ユニオン》という自警団さながらの活動をするギルドも存在しているため、こうして部屋の扉に貼り付いている現場を他のプレイヤーに目撃され、《ユニオン》の団員に通報でもされようものなら、彼のSAO内での地位は地の底まで堕ちることとなるのだが。
―――べ、別に盗聴が趣味の変態野郎ってワケじゃねぇからな!
心の中でもう一度繰り返し、中にいる二人に気付かれないよう息を潜めつつ、そっと扉に耳を押し当てた。
他のプレイヤーが廊下を通り掛からないことを祈りながら、リリアは盗み聞きを敢行したのだった。
────────────
「………」
壁にもたれかかって腕を組んだまま、リリアは眉を顰めた。
視線を足元に落とし、たった今聞いたばかりの会話に思いを巡らせる。
───《投刃》、ねぇ……。
二人の会話の中に登場した、彼にとっても馴染み深い名称。
攻略組プレイヤー達の間で「人殺し」という意味で浸透しているそれを、最初に耳にしたのはいつだったか。
一ヶ月もの月日を費やし、ようやく第2層の主街区が開放された頃、一部の攻略組プレイヤー達が憎々しげに話していたのを聞いたことがあったと記憶している。
その穏やかではない呼び名が指している人物こそがユノであり、現在リリアが所属しているパーティのリーダーであり、彼にとってSAOでの初めての友達でもあるのだから、何とも不思議な巡り合わせだ。
───つっても、まぁ、今頃騒がれるこたぁねぇと思うが……。
ボス攻略戦に参加したプレイヤーの中に元オレンジが混ざっていて、攻略組全員に対して攻撃の意思を見せた───彼らが語った話の内容は、『はじまりの街』に籠っていた非戦闘系プレイヤー達の間にも瞬く間に広まり、当時はその話題で持ち切りだった。
もっとも、肝心の《投刃》本人が派手な行動───この場合は、やはりPKだろう───を起こしていないということもあって、噂は徐々に下火になり、最近ではすっかり風化気味になってきている。
当時の攻略戦に居合わせた面子や、最前線で戦っている攻略組ならまだしも、彼らより下の層を拠点としているプレイヤー達は、ユノの名前を出されてもピンとこないだろう。
それでいい、とリリアは思う
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